新基準で繰延税金資産が計上しやすくなる?! 2016年3月期からの適用も可能な新会計基準

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wavebreakmedia/PIXTA

繰延税金資産をどのように計上するか。企業の業績、財務諸表に大きな影響を与えるだけに、議論の的になってきた。

繰延税金資産は、会計上の費用と税務上の損金の認識期間のズレを調整するもので、たとえば会計上は将来に帰属すべき費用(税)を前払いしたと考え、その分を将来回収できるものとして資産計上する。

実は現在まで、これといった会計上の適用指針はなかった。監査上の実務指針として日本公認会計士協会(JICPA)が1999年11月に定めたガイダンス「監査委員会報告第66号」(以下、66号)があるのみだ。それ以来、1文字も変わっていない、珍しいルールなのだ。

会計ルールがない中、「『どう監査されるか』を念頭において繰延税金資産を計上している状況はおかしい。日本の会計基準設定主体であるASBJ(企業会計基準委員会、Accounting Standards Board of Japan)で作るべきだ」ということになり、2013年12月にJICPAからASBJに移管すべことを基準諮問委員会が提言。 ASBJが14年2月から審議してきた。

IFRSでは計上できても日本基準では計上できず

そして、5月26日、ASBJは「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針(案)」と題する公開草案を発表した。

現行の66号では、企業を1~5号に分類している。業績がすこぶる好調で、繰延税金資産を全額積めるのが1号、それに準じて「ほぼ全額積める」のが2号。「『おおむね5年以内』と規定されているが実際は運用が硬直的で将来5年分の課税所得見込みまでしか最大積めない」のが3号、「例外を除き、実務上は1年分しか積めない」4号、「業績がすこぶる悪く、繰延税金資産を一切積めない」のが5号だ。1号に当たるほどの好調企業は滅多になく、現在「好調」とされる企業の多くは2号なのだという。

これらの中で1号と5号は「まあ、そうだろう」という納得感があり、特に問題視されていない。問題は3~4号で、特にIFRS(国際財務報告基準)の任意適用会社や米国SEC基準で決算を発表している会社から、「IFRS(やSEC)では認められている繰延税金資産が、国内監査基準の66号の影響で認められないのはおかしい」との声が多く出ていた。

過去1年以上のASBJにおける議論では、「そもそも原則主義のIFRSには細則がないのだから、日本でも規定がなくてもいいのではないか」との意見も説得力があったが、「目安となるのでガイダンスは残した方がいい」という意見が多かったという。

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