「ソーセージ買い忘れた妻」に夫はなぜ激怒した? 親の価値観から抜け出せない大人たちの葛藤

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Aさんは子どものころに自分の願望を母親に真剣に受け止めてもらえず、そのことで心に傷を負っていました。そのため妻が自分の願望を満たさなかったことが、Aさんにとっては傷口に塩を擦り込まれるような行為だったのです。

しかしAさんは「妻に対する自分の反応は、母親に大切にされなかった経験が生み出している」ということに気づいていません。それゆえ、妻に対する怒りの感情を抑えることができなかったのです。

トラブルの原因は「内なる子ども」同士の争い

Aさんの怒りの標的となった妻もまた、彼女自身の「内なる子ども」に操られています。妻は子どものころに成績や生活態度で両親を満足させることができなかったと思っており、彼女の「内なる子ども」は“非難されること”にとても敏感になっています。

そのため、Aさんの怒る態度が、妻の子ども時代に持った感情を呼び起こすことにもなってしまいました。妻はAさんの強い非難に「おまえは何もできない、価値のない存在だ」と言われているように感じ、屈辱感を抱き、傷つきました。

このように些細なことでお互いを傷つけ合うため、2人とも離婚したほうがいいのではないかと考えています。

でも、もし2人が「内なる子ども」の願望や傷に目を向けることができていたら、ソーセージや非難の態度といった表面的なことで争うのではなく、本当の問題について話し合うことができ、寄り添い合える関係になっていたはずです。

このAさん夫婦の例は特別なことではなく、どの家庭、どの職場、どの人間関係にも当てはまります。「内なる子ども」の存在に気づかないことで、さまざまな争いが起こっているのです。多くのトラブルが、自意識を持つ大人同士の争いではなく、傷ついた「内なる子ども」同士の争いで引き起こされているのです。

では、幸せな子ども時代を過ごし、基本的信頼感を得た人であれば、不安や問題をまったく抱えずに人生を歩むことができるのでしょうか?

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