新NISAで気をつけたい長期投資に向かない投信 セールストークに惑わされないためには

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さらには、新興国の資本市場は概して脆弱で未成熟なため、市場規模も小さいところが多く、先進国市場に比べて流動性でも大きく劣っています。

確かに、新興国株式に見られる高い成長期待は魅力なのですが、不確実性が大きく、先進国主体の国際分散投資の一部として組み入れるべき投資対象と考え、長期投資では新興国への集中投資運用は避けてください。

外国債券のみを組み入れて運用する投資信託

外国債券を組み入れて運用する投資信託が人気を集めたことがありました。今も、「債券なら安全かもしれない」という理由で、この手の投資信託を購入する人は少なくありません。

ただ正直なところをいえば、外国債券のみを組み入れて運用する投資信託を長期的な資産形成目的で購入する理由は、よく分かりません。そもそも債券に投資する目的は期中に支払われるクーポン(利子)を金利収入として安定的に得ることにあり、長期資産形成の主役にはなりにくいのです。

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外国債券に限らず、債券をポートフォリオに組み入れるのは、ポートフォリオの安定性を高めるためです。債券も株式と同様に値動きする金融商品ですが、値動きは株式に比べれば緩やかですし、償還まで保有すれば元本は確保されます。

こうした安定性の高さから、株式と組み合わせることによって、ポートフォリオの安定性を高めることができます。

ただ、個人が長期的な資産形成をするにあたって、外国債券のみを組み入れて運用している投資信託を保有する必要性は、あまりないと考えられます。なぜなら、個人が持っている金融資産は、株式だけではないからです。多くの人は預貯金を持っています。一定額の預貯金があれば、保有している金融資産ポートフォリオ全体の安定性を高めることができるからです。

たとえば、金融資産500万円のうち、250万円を預貯金にしておき、残り250万円を株式投資信託にしておけば、ある程度、価格変動リスクを抑えたポートフォリオを構築できます。また、株式投資信託と債券投資信託とに分散して投資するのであればバランス型投資信託を購入すればいいので、自分で債券投資信託を購入する意味はあまりありません。

中野 晴啓 なかのアセットマネジメント社長

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なかの はるひろ / Haruhiro Nakano

1987年 クレディセゾン入社。2006年社内ベンチャーとしてセゾン投信設立。2007年4月代表取締役社長、2020年6月代表取締役会長CEOに就任し、 2023年6月に退任。9月1日、なかのアセットマネジメント設立。趣味は歌舞伎鑑賞や鉄道など。

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