「あえて多様性を叫ぶこと」が差別につながる現実 LGBTQの人に言ってはいけない言葉はあるのか

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そして、差別をなくすためには、相手と対等に向き合い、尊重する姿勢があることが大切で、「こうしちゃダメ」という禁止や「配慮しなさい」という強制をするべきではないと思います。そうした教育は、かえって相手に対してフィルターのかかってしまうリスクがあるのです。

LGBTQの人に言ってはいけない言葉はない

ただ、多様性の中にもルールは必要で、それがないと差別につながります。例えばトイレです。私が研修講師として企業に出向くようになった25年前は、男性の多い職場だと、共用トイレのところがまだ多くありました。男女分けることで、安心して利用できるようになったことは大きな進歩で、それは差別ではないと思います。

性を決めつけられるのが嫌という意見があるのも理解できるのですが、それを悪用する人もいるのです。そうした意味から、区別は必要で、飲酒や喫煙、運転免許の取得に年齢制限があるのと同様と考えます。そうした意味では、どこにでも「だれでもトイレ」が設置されることが望まれます。

それから、本当によくあることなのですが、「LGBTQの人に言ってはいけない言葉はありますか」という質問です。答えは、「ない」です。LGBTQの人に言ってはいけない言葉は、そうでない人にも言ってはいけません。どんな人に対しても、相手を傷つけるような言動や人格否定をしないように、配慮することは必要で、「〇〇だから」という定義ではないのです。

多様性をあえて叫ばなくても、思いやりをもって、お互い認め合うことができる関係性を築けることを願っています。

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大野 萌子 日本メンタルアップ支援機構 代表理事

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おおの もえこ / Moeko Ohno

法政大学卒。一般社団法人日本メンタルアップ支援機構(メンタルアップマネージャ資格認定機関)代表理事、産業カウンセラー、2級キャリアコンサルティング技能士。企業内健康管理室カウンセラーとしての長年の現場経験を生かした、人間関係改善に必須のコミュニケーション、ストレスマネジメントなどの分野を得意とする。現在は防衛省、文部科学省などの官公庁をはじめ、大手企業、大学、医療機関などで年間120件以上の講演・研修を行い、机上の空論ではない「生きたメンタルヘルス対策」を提供している。著書に『よけいなひと言を好かれるセリフに変える言いかえ図鑑』(サンマーク出版)がある。

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