5分でわかる! 経産省「企業買収の行動指針」 「真摯な買収提案」には「真摯な検討」を

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検討の結果、取締役会が買収に応じる場合、株主の利益を重視した検討と、会社としての説明責任が求められる。

具体的には取引条件の改善により株主にとってできる限り有利な取引条件で買収が行われることを目指すべきだとした。加えて、ほかの潜在的な買収者が対抗提案を行える環境を構築することや、そうしたほかの買収者を模索することも含め、市場に対する説明責任を果たすべきだとした。

保身の対抗措置はNG

対象会社が買収提案に応じず、対抗措置(買収防衛策)を発動する際の考え方はどうか。先述のように「買収防衛策」から「買収への対応方針・対抗措置」へと用語を改めるとともに、経営陣の保身目的で用いてはならないと明示した。

ここでも株主の意思を尊重することを重視して、取締役会限りの判断ではなく、株主総会を経て発動することが重要だ。

対抗措置の発動について買収提案者などを除いた株主で決議するMOM(マジョリティー・オブ・マイノリティー)決議は、「非常に例外的かつ限定的な場合に限られる」。MOM決議をめぐっては、今年6月に行われたコスモエネルギーホールディングスの株主総会で村上世彰氏の投資会社を除いた決議が行われ、議論になった。

ただ、さらなる対抗措置を諮る12月開催予定の株主総会では一転してMOMを封印。コスモのニュースリリースにはMOMに関して新指針が影響したかについて記載はないが、村上氏側の行動に関し「買収指針の第3原則である透明性の原則に反する」と、新批判をしており、早くも影響が見て取れる。

買収者・対象会社双方が株主に対して十分な情報開示をする「透明性の原則」も定めたのは、買収の是非や取引条件に関する正しい選択を株主が行うために十分な情報が不可欠だからだ。

買収者には実質株主に関する情報やTOB(株式公開買い付け)予告に関する開示を、対象会社には取締役会の検討経緯や対抗提案があった場合の判断理由などの開示を推奨している。

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