なぜ世界の開発現場では「失敗」を重視するのか 生産性低い日本人が知らない「Fail Fast」の価値

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基本的なスタンスとして、「従業員への信頼」を慣習とする多くのアメリカ企業では、普段の業務において細かいことを言わない。

最初に会社と合意したゴール、つまり大まかなKPI(重要業績評価指標)を達成していたら、途中で失敗しようが、人より不器用だろうが何だろうがとくに問題にはならない。まずはその人を信用する。

KPIが達成できなければ、1年の評価のタイミングで、給料が下がったりクビになったりする。ただそれだけの話だ。

自分との戦いに勝つことが高報酬への道

マイクロソフトの場合は、「何ができるか」でエンジニアとしてのランクは明確に定義されており、自分のランクによって給与は決定される。

給与を上げたかったら1つ上のランクの仕事をしてKPIを達成する。するとマネジャーがプロモート(ランク上げ) しようとノミネートしてくれる。

『世界一流エンジニアの思考法』(文藝春秋)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

ちなみにGAFAM(Google、Amazon、Facebook、Apple、Microsoft)のソフトウェアエンジニアの年収は、新卒1〜2年目で約15万〜19万ドル、入社数年で19万〜27万ドル、シニアエンジニアクラスで27万〜40万ドルだ。

他人との比較ではなく、自分との戦いでレベルアップしていく仕組みだ。

フェイスブックのベテランエンジニアに至っては100万ドル近い報酬を得る(ボーナス等含む。年収が上がるにつれ自社株での支払い比率は高くなる)。

元アマゾンのプロダクトマネジャー・ゆうさんのブログ(https://honkiku.com/gafa-salary/)も参考になるので、興味のある人はチェックしてみるとよいだろう。

ランクが上がるごとに給与レンジが跳ね上がるため、スピーディーにチャレンジを重ねてKPIを達成したものが相応に報われる仕組みとなっている。

牛尾 剛 マイクロソフトエンジニア

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うしお つよし / Tsuyoshi Ushio

1971年、大阪府生まれ。米マイクロソフトAzure FunctionsプロダクトTチーム シニアソフトウェアエンジニア。シアトル在住。関西大学卒業後、大手SIerでITエンジニアをはじめ、2009年に独立。アジャイル、DevOpsのコンサルタントとして数多くのコンサルティングや講演を手掛けてきた。2015年、米国マイクロソフトに入社。エバンジェリストとしての活躍を経て、2019年より米国本社でAzure Functionsの開発に従事する。著作に『ITエンジニアのゼロから始める英語勉強法』などがある。ソフトウェア開発の最前線での学びを伝えるnoteが人気を博す。

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