クリエーティブな人が軽井沢で子育てする理由 首都圏で暮らしていた若い世帯の移住が増加

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「どこにいても、子どもは自分なりに工夫して目の前のことから学んでいくと実感している」と話すのは、探究学舎の代表・宝槻泰伸さん。5人の子育て中で、自身も、徹底的に好奇心を刺激する方針の父親の下で育ち、高校には行かずに京都大学に進学、起業した経緯を持つ。

移住のきっかけは、妻が軽井沢風越学園を見つけてきたことで、子どもたちは同学園に通う。「地域の中でもまれながら育つなら、学校はどこでもいいと思っていた。東京・三鷹市で塾をやっていたこともあり、当初は移住に難色を示していた」(宝槻さん)。

移住して3年以上が経ち、家族の満足度は高い。「自然は豊か、食事はおいしく流れる時間が違う。新幹線のホームや近所で経営者やクリエーター、ジャズピアニストなど芸術家の方を見かける」。どんな人かは一見わからないが、積極的に話しかけて友人を増やしている。

「都会にもいろいろな方はいるが、軽井沢は密度の高さを感じる。もちろん、いわゆる社会的成功者みたいな人ばかりではない。それぞれのスタンスで、軽井沢の暮らしを楽しんでいると思う」

軽井沢観光協会の副会長で、キャンプ場「ライジングフィールド軽井沢」を運営する森和成さんとも、子どもの学校を介して知り合った。ともに教育イベントを実施するなど、仕事とプライベートの垣根なく世界が広がる。

デメリットはないのだろうか。「習い事の選択肢が少ないこと。やはり東京は何でもあるので。もう1つは、基本的に車社会で、友達と遊ぶ場合は約束して送迎することが必要な点。私自身は公園が近くにあり友達と思い切り遊ぶ子ども時代だったので、初めはかわいそうだと思っていた」。

ところが、子どもたちを見て、考えは変化していった。「子どもたちに必要なのは、余白の時間、自由な時間だった。目の前にある選択肢の中で、それぞれクリエーティビティーを発揮している。

例えば、『マインクラフト』で建物を造っていたかと思えば、目の前の森に遊びに行ったり、映画を見たり。インターネットによって選択肢も増えている。中2の長男は、静かな自然環境の中で過ごしているからか、高校以降は広い世界を見たいと留学も視野に入れているようだ」と語った。

自ら学べる環境に

新しい学校の選択肢は、現在は私立を中心に増えている。文部科学省は、「考える人」をつくることを目標に「国際バカロレア」の推進、導入を進めるなど、一人ひとりの可能性を引き出すことを目指すと掲げている。

「これからの子供たちに必要になるのは、いかに社会が変化しようと、自分で課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、行動し、よりよく問題を解決する資質や能力」と国立教育政策研究所発表の資料に書かれている。今後、公立でも多様な学校が増えていく流れは加速するか。

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