キヤノンが「8年ぶり大展示会」でみせた最新の姿 メディカルなどの注目製品と技術の一端を公に

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同事業の母体となったのは、2016年に6655億円で買収した東芝メディカルシステムズ(現・キヤノンメディカルシステムズ)。展示されているCTには、キヤノンのカメラが埋め込まれているなど、買収シナジーのわかりやすい製品もある。

キヤノンの売上高構成

「ブースもいちばん目立つところで、メディカルへの期待の大きさを感じる。買収当初は、キヤノンで事業を継続できるのか、と心配されていたが、技術展示を見て、今後も発展できそうだと感じてもらえると嬉しい」

ブースに立ち寄ったキヤノンメディカルシステムズの瀧口登志夫社長は、会場を見渡しながらそう話した。

半導体製造装置でのゲームチェンジャー

会場に展示された製品の中でも、来場者でひときわ賑わっていたのが、「ナノインプリント半導体製造装置」の見本展示だ。

キヤノンは全社売り上げの約1割を占めるインダストリー事業で半導体露光装置を手がけている。同事業では目下、2025年春をメドに500億円を投じて半導体露光装置の製造能力を2倍にする計画が進行中。勢いのある事業だ。

ナノインプリント半導体製造装置は、まったく方式の新しい半導体露光装置。回路が彫り込まれた原版をハンコのようにスタンプすることで、半導体の材料であるウェハーに回路を描く。最先端半導体の製造に使うことが可能で、既存の露光装置より消費電力を大幅に減らせるという強みがある。

キヤノンは2014年にモレキュラーインプリント社の買収を通じて核となる技術を取得。10年もの間、粘り強く開発を続けていた。その装置が「発売開始」と発表されたのは、キヤノンエキスポ開催の1週間前、10月13日のことだった。

上市された直後とあって、来場者の熱い視線が注がれていた。「半導体製造においてゲームチェンジャーになる可能性を秘める」。御手洗氏もそう期待を込める製品だ。

キヤノンエキスポ2023
来場者で賑わうナノインプリント半導体製造装置の展示。水色のシャツを着た説明員が丁寧に解説していた(撮影:尾形文繁)

今回のキヤノンエキスポは、ナノインプリント半導体製造装置のような製品だけを展示していたわけではない。これまでは表に出してこなかった、各事業領域に共通する技術や開発環境についても展示した。

販売会社主体で製品展示が中心だった前回までと違って、今回は本社主導での開催。競争力の源である技術の一端を公にしたのは、自社の開発環境を理解してもらい、かつ他社・異業種との協業のきっかけの場とする狙いがあった。

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