サイゼリヤ、国内赤字でも「値上げをしない」理由 業績上昇でも、国内は4期連続で水面下に沈む

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下の図を見てほしい。営業利益72億円を地域セグメント別に見てみると、いびつな構成であることがわかる。(※外部配信先では図表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)

2023年8月期は、中国や台湾、シンガポールを含むアジア地域では営業利益84億円(前期実績22億円)、食材工場のあるオーストラリアでは2億円(同1億円)を計上した。一方、日本国内を見てみると、営業赤字14億円だった。ここ数年、海外で稼いだ利益で、国内の赤字を埋めているのだ。

国内は2020年8月期が56億円、2021年8月期が72億円、2022年8月期が21億円と営業赤字が続いていた。今回で4期連続の損失計上と、深刻な状況にある。

日本と海外で違う、値上げの「許容度」

すべての店舗を直営で運営するサイゼリヤで、国内と海外において、なぜこれほどまでに収益性の違いが生まれるのか。その理由は「値上げの許容度」にある。

サイゼリヤは、アジアでは機動的な価格政策を実施している。上海や香港にある各地の法人が、それぞれの地域の経済状況などから価格を決定し、柔軟に値上げを行っている。

サイゼリヤの松谷秀治社長は、「例えば、中国では賃金の上昇が続いている。サイゼリヤは値上げを行っても、『リーズナブルなイタリアン』として認識されていることもあり、客数も伸びている」と話す。

対照的に、国内では値上げを実施していない。実施していないというよりも、値上げに踏み込めないのだ。「日本は賃金が伸びていないので、値上げを行っていない」と、松谷社長は吐露する。

その一方で、「(値上げしていないこともあり)来店頻度が増え、客数増加につながっている」(同)という。

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