マンションで静かに進む「ステルス値上げ」の現実 人手不足の建築業界に迫る「2024年問題」とは?

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理不尽な管理委託費の「ステルス値上げ」を提案された場合、管理会社の見直し(リプレイス)をする方法を検討する管理組合も多い。しかし、人手不足や諸経費の高騰など、与えられた課題はどの管理会社でもそう変わらない。

新たに管理を委託しようと考えても、管理会社から断られるケースも考えられるのだ。現在の委託先においても、管理委託費値上げなどの条件を受け入れなければ、撤退されてしまう可能性すらある。

フロント担当者も複数のマンションを担当

管理委託費値上げなどの問題に加え、事態を複雑にさせているのが管理会社で、主に窓口として対応する「フロント」担当者(フロントマネージャー)の存在だ。マンション管理会社と管理組合との間に立ち、ソフト・ハードの両面から支援を行い、さまざまな交渉をまとめる重要な人材である。

このフロント人材も慢性的に不足しており、1人で常時複数のマンションを抱えている場合がほとんどだ。育成を担う人材も少ないため、若手は経験値も低いまま、現場で対応することになる。業界経験や知識に乏しく、キャパシティーの問題なども加わって、その仕事ぶりに不満を抱える管理組合も少なくない。

私たちさくら事務所の事例では、長期修繕計画の見直しに関する相談を受け、実際に理事会に参加したところ、当該マンションのフロント担当者は、何年目にどの工事が予定されているのかをほぼ理解していない状況であった。

それでは、管理組合との良好な関係性を築くことはできず、二人三脚でマンション管理の質を向上するパートナーとしては、力不足感が否めない。

仮に信頼できる優秀なフロント担当者に出会ったとしても、任せきりになることは避けたい。管理会社にどこまでの業務を委託しているかをきちんと把握し、明確にしておく必要がある。

例えば、管理委託契約に「理事会と総会の運営補助業務」とだけ記載されている場合でも、「理事会には1回あたり何時間出席し、月に何回サポートを依頼できるのか」「議事録はどちらが作成するのか」など、細かい部分に関しても明文化することをおすすめしたい。

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