日本人大好き「焼肉店」倒産続いている最大の理由 3年前の寿司屋倒産ドミノを彷彿とさせる現象

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「格之進」も創業の頃は、熟成肉も一頭買いの概念もなかった頃だったので、苦労もしましたがずっと続けるうちにブームになり、希少部位が注目され、塊焼きも話題になりコロナ禍もなんとか凌ぐことができました。これも小さな会社だからできたことだと思います。

大手企業は、食材を切らすことなく広く流通させる必要があり、数が少ないもの、手間のかかるものは対応しにくいからです。個性的な店舗運営は、個人店だからこそできるのです。

焼肉店経営は、個性を磨くことがポイント

食材費、牛肉価格の高騰は、生産の現場のことを考えると致し方がないと思います。そもそも牛肉は、肥育原価が高く、鶏肉、豚肉に比べ利益率が悪いので、餌代も光熱費もあらゆるものが値上がりしている今は、生産者の利益はどんどん減るばかりか、経営が厳しい状態が加速ししているのです。

鶏肉(一般的なブロイラー)は、肥育50〜60日、豚肉は、150〜180日ほどで商品=お肉になりますが、牛肉は、840〜1000日もかかるので、肥育コストが高く、収入を得るまでに時間がかかります。生産の現場は限界に来ているので、牛肉の値上げは仕方がないのです。

そして、人件費。これは、デフレからインフレに移行している今の日本は、どの業種でも賃金アップしないと生活していけないので、人件費の値上げも仕方がないですね。

株価は高値が続いており、景気の回復傾向が見えてきていると言われる昨今。そして10年以上続いている肉ブームの中、焼肉はまだまだ可能性がある業態だと思います。「あの店の⚪︎⚪︎が食べたい!」と言わせることが大事で、個性に磨きをかける経営をすれば、大丈夫なのではないでしょうか。

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千葉 祐士 門崎熟成肉 格之進 代表

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ちば ますお / Masuo Chiba

1971年、岩手県一関市生まれ。1994年東北学院大学経済学部商学科卒業。1994年大倉工業入社、1999年より外食事業を展開し、五代格之進を開業。2004年丑舎格之進 川崎本店、2006年格之進TOKYO(練馬区桜台)開業。2008年10月に株式会社門崎を設立し、2010年格之進R(六本木)開業。2013年ミートレストラン格之進(一関)、焼肉のろし(岩手県陸前高田)、2014年肉屋格之進F(六本木アークヒルズサウスタワー)開業。2015年11月格之進Rt(代々木八幡)をオープン。現在は「門崎熟成肉」の牛肉販売、卸・食品加工、店舗運営、飲食店運営サポート事業、牛肉の啓蒙活動を行う。
 

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