発達障害の子どもに絶対してはいけない「伝え方」 子ども自己肯定感は親の伝え方で変わる

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――「これができていないね」というようなことは、あまり言わないほうがいいのでしょうか?

加藤:本人が自分の脳の特性を知ること自体は大事なので、親がフィードバックしてあげることは必要です。フィードバックの仕方で意識してほしいのは「9対1の法則」です。「ここまでできてすごいよね。これもできていたよ。こっちもできていたね!」とまず9回はできること、得意なことをフィードバックします。そして、残りの1回で「これは改善できるといいね」と苦手なことについてふれるくらいでちょうどいいのです。

できていることが9個あって、できていないことが1個なら「1個くらいならがんばってみよう!」という気になるでしょう?

そもそも脳は楽しいときに成長するものです。「ダメ、ダメ」と言われていたら成長しません。

過保護くらいでちょうどいい

――加藤先生ご自身も、子どもの頃、ご家族のサポートが素晴らしかったそうですね。

私は音読困難症状があって、本を声に出して読むことができませんでした。

しかし、本が読めないことをとやかく言われたりしませんでしたし、勉強をしないで、魚釣りや草野球ばかりやっていることを咎められたこともなかったです。

それから、整理整頓ができず、忘れっぽいのですが、忘れ物はしたことがないんです。母親が持ち物を事前に全部そろえてくれていたのですね。やろうと思ったときには、すべて準備が整っていました。

「なんでできないんだ」とネガティブなことを言われた記憶がないですし、その言葉をいまだに86歳で健在の母から聞くことはありません。いまも自分のことを差し置いて私を気づかってくれますので、おそらく一生ネガティブな言葉を聞くことはないでしょう。

一緒に住んでいた祖父母は、「どうしてこんなにいい子が生まれたんだろうねぇ」と私の顔を見ていつも言っていました。そんな家族の中にいたので、子どもの頃の私は、自分が幸せにあふれているから「幸せとは人にあげるものだ」と思っていたんです。

これまでの日本的な捉え方からすれば、私の母親はスーパー過保護と言えるかもしれません。

ただ、長年医師として多くの家族に接していて、スーパー過保護のほうが後々の成長がうまくいく印象を持っています。過保護がいけないということを言われる方がもいますが、小児科医として35年ほど診療していきましたが、過保護で不幸になった子どもを見たことがないです。ここでは触れませんが、「過保護」の定義がわたしは他の方々と違うのかもしれません。

2023年5月にオランダのアムステルダムで行われたADHD国際会議では「ファミリーレジリエンス」の重要性が言われました。ファミリーレジリエンスとは家族関係の機能性、回復力のことです。発達障害の子は手がかかり、サポートの大変さはありますが、家族がしなやかに受け止め、環境を整えればぐんぐん成長していくことができます。

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