「4℃」の匿名宝飾店、秀逸施策の裏のイジられ史 「SNSでネタ扱い」されてきた企業の挽回策?

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しかし、その一方で「庶民的だ」とナメられやすい側面もある。どちらも優れた企業努力の結果なのだが、少なくともSNS上では、ネガティブイメージの温床にもなっている。

根付いたブランドイメージからの脱却は容易ではない

しかしながら、これまで4℃は、ネガティブイメージに対して、明確な意思表示をしてこなかったように思える。というより、むしろ意思表示できなかった、と言ったほうが正しいのかもしれない。

ネットの風評と真正面から立ち向かってしまうと、「ムキになっている」と感じさせてしまう。従来からのファンを失望させないためにも、言葉で反論するのは得ではないだろう。その点、行動で示した「匿名宝飾店」は、最適解だったと言える。

相手の反応がないと、余計にたたく。これは人間に対するイジメの構図とも似ている。ひとたび「イジっていいブランド」だと認定されてしまうと、からかうユーザーも徐々に増える。その先にあるのは、ネガティブな形でのブランドイメージの固定化だ。

では、どうすれば、固定化されたブランドイメージを脱却できるのか。ひとつ考えられるのは、全く別のブランドを育てるパターンだ。関東や関西、九州を中心に70店舗以上を展開する寿司居酒屋の「鮨 酒 肴 杉玉」は、その成功例と言えるだろう。

この「杉玉」、実は回転寿司チェーン「スシロー」の系列だ。落ち着いた店内と、お酒をメインにした商品ラインナップ、そしてスシローより少し高めの単価にすることで、同じ寿司をメインにした業態ながら、違った印象を受ける。

杉玉とスシローの関係は、匿名宝飾店のように隠されているわけではないが、本稿を読んで「そうだったの!」と知る方もいるだろう。一連の「迷惑客騒動」は起きたが、イメージの異なる別ブランドを持っていたことで、リスク分散につながったのではないか。

あえて正体を隠して活動し、一定の成果を残したあとに「ネタバレ」することで、それまでのイメージを払拭するスタイルもある。今月解散した2人組YouTuber「ヴァンゆん」のヴァンビさんは、すでに人気YouTuberでありながら、1年ほど前から「spider-maaaaaaan(スパイダーメーン)」として覆面で活動。チャンネル登録者1000万人を達成したのを機に、今年8月に正体を明かした。

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