「4℃」の匿名宝飾店、秀逸施策の裏のイジられ史 「SNSでネタ扱い」されてきた企業の挽回策?

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繊研新聞(9月20日ウェブ配信記事)に掲載された、瀧口昭弘社長のコメントによると、4℃が昨年50周年を迎えたのを機に、「今だからこそ、蓄積されたイメージを離れ、今一度原点に戻り、ジュエリーそのものを見てもらいたいとの思いがあった」ことが、匿名宝飾店オープンの理由になったという。なお9月19日までに、約4000人が来店したそうだ。

(画像:匿名宝飾店ホームページ)

正体を明かしたことで、もともと「匿名宝飾店」を知らなかった人も含め、SNS上で話題になっている。その多くは、ネット上でのブランドイメージを絡めたもので、「ネガティブを逆手に取った秀逸な施策」や、「物事の本質とは何かを考えさせられる」といった感想が多い。

このニュースを聞いて、まず筆者は「想像以上に4℃は、イメージを気にしていたんだな」と思いつつ、みずからの力で覆したことに感心した。それだけネット上では、ブランドイメージが、雑に扱われていたからだ。

4℃をめぐる「ネットユーザーの価値観」

「4℃」と検索しようとすると、予測キーワードの中に「炎上」も含まれる。これは別に、4℃そのものが炎上しているのではなく、4℃をめぐる「ネットユーザーの価値観」が話題になっていたことによる。

特に有名な例は、数年前に起きた「30代へのプレゼントとして、4℃はいかがなものか」といった論争だ。X(旧ツイッター)や「Yahoo!知恵袋」の投稿をみると、「大学生など10〜20代向けで、『オトナ』には合わない」といった理由から、「ダサい」と判断するユーザーはそれなりにいることがわかる。

「そこそこの年齢になれば」的な文脈で、同じく話題になりがちな恋愛ネタが「サイゼデート」だ。とくに初めてのデートで、イタリアンファミレス「サイゼリヤ」を選ぶのは、相手に失礼なんじゃないか……といった発言は、しばしばSNS上の火種となる。

筆者は「おいしいんだから、サイゼでいいのでは。金銭感覚が合っているかも確認できるし」といった立場だが、特別なムードを重んじる人々からは、「相手を尊重していない」と批判の声がでるのも一理あるのかもしれない。

4℃とサイゼリヤに共通するのは、「手が届きやすいのに、クオリティーが担保されている」点にあるだろう。言うまでもないことだが、価格と品質は完全には比例しない。サイゼリヤの場合、本職のシェフ・料理人の中にもその美味しさを評価する声が少なくない。

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