ぐっすり睡眠が「脳のゴミを掃除する」納得の根拠 ただ寝るだけはNG!なぜ熟睡することが大切?

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そして、一番大切なのは「ぐっすり寝」。

ぐっすり眠ることで、たまった疲れだけでなく、老廃物(ゴミ)を睡眠中に効率よく除去することができ、認知症を予防してくれます。

しかし、この「ぐっすり寝」を妨げてしまう大きな原因の一つが、スマホやパソコンの画面から放たれるブルーライトです。

通常、夜になると、体内時計の働きで、「メラトニン」と呼ばれるホルモンが増えて入眠へと誘います。メラトニンは松果体から分泌され、概日リズムの調節作用を持つホルモンです。しかし、眠る直前のスマホのブルーライトが眠りのリズムを狂わせてしまいます。さらにブルーライトの光はメラトニンの分泌を減らし、交感神経を刺激して脳を覚醒モードにしてしまいます。

睡眠が脳や全身の病気にストップをかける

睡眠が注目されている理由は、脳過労や不眠、うつ、高血圧や糖尿病、ストレスなどといった生活習慣が原因の心身の不調や、脳卒中、MCIといった脳のトラブル、そしてそれらを放置すると認知症へと続いてしまう「ドミノ倒し現象」にブレーキをかけられる、とされているからです。特に、「中高年のうつ病は認知症のリスクを2.1倍も上げてしまう」と言われています。

今こそ睡眠の役割を見直しましょう。

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「眠らないことは軽度の脳損傷。眠ることは脳の掃除」だと心得て、「熟睡で脳の機能をリセットし、最適化することで、心身の活力を取り戻す」ことから始めてください。生活習慣病予防や、認知症のリスクを減らす生活へとつながります。

まず、良い睡眠の基準となる睡眠時間は、前述したように、7時間とも8時間とも言われます。個人差はありますが、それより明らかに短いと、眠っている間の脳の状態の変化や眠りの仕組みから見ても、良い睡眠はとれていない、と考えていいでしょう。

もう一つ、良い睡眠の目安となるのは「熟睡=ぐっすり寝」ができているかどうか。熟睡できていれば、睡眠時間が少し短かったとしても脳過労は軽減できます。逆に、早くからベッドに入っていても、入眠障害、中途覚醒、早朝覚醒、熟眠障害などの睡眠障害があると、睡眠負債となり脳過労は解消されません。

奥村 歩 日本認知症学会専門医・指導医 おくむらメモリークリニック理事長

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おくむら あゆみ / Ayumi Okumura

1961年生まれ。長野県出身の医学博士。岐阜大学医学部卒業、同大学大学院医学博士課程修了。 アメリカ・ノースカロライナ神経科学センターに留学後、岐阜大学付属病院脳 神経外科病棟医長併任講師、木沢記念病院勤務を経て、2008年に「おくむらメモリークリニック」を開院。設置した「もの忘れ外来」には全国から多くの人が来院し、これまでに10万人以上の脳を診断。脳神経外科医として認知 症やうつ病に関する診察も多く経験し、日本脳神経外科学会(評議員)・日本認知症学会(専門医・指導医)・日本うつ病学会他の学会で活躍している。

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