松下幸之助は壁にぶつかっても楽観的だった

「絶望はあかん、道はある」

困難な局面に立たせたれたとき、松下が思う大事なこととは?(写真:makaron* / PIXTA)
昭和の大経営者である松下幸之助。彼の言葉は時代を超えた普遍性と説得力を持っている。しかし今の20~40代の新世代リーダーにとって、「経営の神様」は遠い存在になっているのではないだろうか。松下幸之助が、23年にわたって側近として仕えた江口克彦氏に口伝したリーダーシップの奥義と、そのストーリーを味わって欲しい。(編集部) 

 

昭和52年(1977)11月のある日の松下幸之助の昼食は、うな重だった。松下に、会社の経営状況を報告し終わると、まだ経営を担当して1年半ほどの私の経営について心配してくれたのか、

「きみ、経営というのは、いろいろ問題が出てきて、心休まるということはないやろ。難しいもんや。まあ、売り上げも考えんといかん、利益も考えんといかん。それ以上に社員のこと、また、お客様のこととかな、考えんといかんからな。商売はいつもいつもうまくいくということはない。むしろ壁にぶつかって、前に進めんことのほうが多い。まあ、それが経営やな。

けどな、壁にぶつかっても、それでもうダメやと、お終いやと。そういうふうに考えたらあかんで。必ずその壁の向こう側に行ける知恵が出てくるもんや。わしも長いこと(経営者を)やっとるからな。もうあかん、これでお終いやと感じることもないではなかったけど、その都度なんとか壁の向こうに行ける方法はあるんや、絶対に行けるんやと、なんとしても壁の向こうに行くんやと。そう考えて一生懸命、その方法を考えてやってきた。そう考えると確かに、壁の向こうに行く知恵というか、方法が浮かんでくる、出てくるんやな。

何度もそうやって苦境を乗り越えてきた。振り返ってみれば、乗り越えてきたんやからな、苦境、苦難だったとは言えんとは思うけどな」

熱意を失ってはいけない

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ニコリと笑って、うな重を一口食べては話し、話しては、一口食べながら話した。

「きみ、2階があるとするわな。その2階に上がりたい、なんとしても2階に上がりたい。そういう思い、熱意があれば、そこいらの石を根気よく集めて、積み上げて、それを登って2階に上がるという工夫、知恵も出てくるし、そうや、こうしようとハシゴを考え出すこともできる。絶対に2階に上がろうという熱意のある人だけが、結局は2階に上がることができるというわけや」

箸をおいて、お茶を飲みながら、

「さっきの壁の話な。あれも壁にぶつかっても、なんとか壁の向こうに行こうと思ったら、左に行って抜け穴はないか、右に行って抜け穴はないか、なければ、壁の下に穴を開けることは出来ないか。それもダメなら、さっきの2階に上がるようなハシゴが考えられないか。

懸命に考えれば、まだまだ、知恵も工夫も出てくるわね」

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