三菱自、海外専用「トライトン」を日本で投入の真意 「三菱らしさ」構築へ、ラリーの実績もフル活用

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タイで生産し、海外で販売している1トンピックアップトラック「トライトン」を2024年初頭に日本市場でも投入する。

ピックアップトラックは車体と荷台が一体となった小型トラックで、山道や密林地帯、雪原など難路での走行に適している。東南アジアや北米、中東、南米など幅広い地域で一定の需要がある。

1978年に発売したトライトンは累計約560万台を生産し、世界約150カ国で販売するロングセラー商品で、悪路での走破性や堅牢性の高さが評価されている。三菱自にとって昨年、最も販売台数が多かったフラッグシップモデルだ。

そのトライトンの日本市場への投入は、2011年以来約12年ぶりとなる。日本への導入を予定しているのはディーゼルエンジンモデルのみ。昨今の電動化に逆行する流れにも見えるが、加藤社長は「日本でもアウトドア志向が強まっている。幅広く受け入れられるクルマではないが、われわれの技術を体現するモデルとしてブランドづくりにも欠かせない存在だ」と強調する。

日本のピックアップトラック市場は、トヨタ・ハイラックスの独壇場となっているが、トライトンの投入で母国市場である日本でのブランド醸成を狙う。年間数千台の販売を見込み、将来的には電動化への対応も視野に入れる。

「ラリーアート」を復活しレースに参戦

さらに、取りやめていたモータースポーツチーム「チーム三菱ラリーアート」を2022年に約10年ぶりに復活させてラリーレースに参戦。走行技術の研究開発拠点である北海道音更町のテストコース「十勝研究所」に併設する十勝アドベンチャートレイルに、岩場やぬかるみといった走行環境の悪いコースを新たに設けた。今後は一般への開放も検討するという。

「レースは限界を超えた先の経験が得られる。故障した際も限られた時間の中で原因を特定しなければならず、エンジニアの判断力や行動力が磨かれる。ヒト作りができる重要な要素だ」(加藤社長)。レースはファン作りと自社技術を磨く場の両面を併せ持ち、自動車メーカーにとっていわば基盤づくりの役割を担う。今後はより自社ブランドの訴求を意識した取り組みを広げる方針という。

北海道で技術説明会を開催。加藤隆雄社長(右)は「ブランド力醸成に向けた取り組みを強化していきたい」と強調。「パジェロ」でパリダカを2連覇した増岡浩氏(左)が登場するなど、ラリーレースでの実績をブランド再構築に活用する意図が感じられた(写真:三菱自動車)
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