やたら「ウザい」ばかり言う子どもに潜む深刻問題 丁寧に聞くと「遠足が楽しみでソワソワ」してた

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出口:ありますよね。今は語彙が少なく、感情や状況を的確な言葉で表現するのが難しい子が多いと感じています。トラブルの中には、語彙力の低さが根幹にあるケースは多いだろうと思います。

語彙が少ない背景の一つには、「ヤバい」などの便利な言葉に頼りすぎて、きちんと表現してきていないことがあるでしょうね。ポジティブなこともネガティブなことも一つの言葉で表現してばかりでは、意味を咀嚼しようがありません。

(写真:伊藤孝一)

ちゃんとした言葉で言うとどうなるのか、言いかえてみるとどんな表現になるのか。大人は、子どもたちに知らせる必要があります。言葉は、知らなければ使いようがないわけですから、まずは知ることです。

少年院では、本をたくさん読ませるようにしています。言葉を適切に使えないと、社会復帰してからも苦労することになりますから。それから、表現させることです。言葉を使って、感情や状況を説明できるように練習します。

言葉を引き出すには、まず受け入れること

小川:『犯罪心理学者は見た危ない子育て』には、出口先生が心理分析をした非行少年たちの事例が載っています。非行少年たちに質問しても、なかなか言葉が出てこないこともあるのではないかと思うのですが、出口先生のような心理職の方や、少年院の先生方はどうやって言葉を引き出していらっしゃるのですか?

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出口:非行少年たちの多くは、感情を言葉で表現するのが苦手です。言葉より先に手や足が出てしまうんです。感情を適切なかたちで吐露させることが非常に重要です。

面接では、その子が言うことを肯定し、「こういうことかな?」と言いかえながら適切な言葉を探していきます。「ムカつく」とか「死ね」といった言葉も、「そう思ったんだね」と受け入れながら聞きます。「そんなことを言っちゃダメ」とは絶対に言いません。どんなに要領を得なくても「あなたの言うことは意味がわからない」なんて言ってしまったらおしまいです。

小川:出口先生は、否定から入るのではなく、受け入れることが大事だと常におっしゃっていますよね。問題行動があったとしても、頭ごなしに否定しては本人は言い訳をするか反省するフリをするだけで内省が深まらない。「あなたはそう思ったんだね」と肯定しながら聞いてくれる人がいることで、自ら気づき、前に進むことができるようになるわけですよね。

『超こども言いかえ図鑑』には、「ヤバい」や「マジで」が口癖の語彙の少ないキャラクターが出てきますが、彼らを否定しないことは最初に決めていました。それぞれの言葉づかいを認めながら、語彙を増やしていけたらいいなと思ったんです。

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