「生誕祭に客1人」アイドル支える"ヲタク"の正体 「ただ1人、ペンライトを振る男性」直撃すると…

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一方、他のヲタク仲間たちから、動画のトモさんはいつも通りで仕上がっていたという。

そんなトモさん、1人ライブはどう感じていたのだろうか。

「(生誕祭の特典ライブは)凄く楽しかったですよ。まさかその後にあんな形で知られることになるとは思わなかったですが(笑)」

「動画出すのは聞いてOKしていましたしね。僕はアイドルヲタクってよりは普段はシンガーメインに応援していて、だから彼女の歌が褒められるのはすごく嬉しいんですよ。動画になったあの曲『Re:start!!』もすごく好きですしね」

ただ純粋に、彼女の曲が好きで応援している。その純粋な思いが動画から見た人に伝わったのだろう。

アイドルを卒業し「シンガー」として再始動

この生誕祭の日は、うしおがアイドルを卒業してシンガーになることを誓うライブでもあった。

「正直、このままアイドルを続けていくのは中途半端だなと考えてて。でも、歌をもっともっと多くの人に聴いてもらいたくて。それで『アイドルを卒業して、シンガーとしてきちんと歌おう』って決めました。出るライブの系統も変わりますしね」

ひそかに決めていたアイドルの卒業。そして同時にシンガーへの転向。歌うことは変わらないが、ヲタクの皆にはさまざまな思いがあった。

この生誕&卒業ライブに来たヲタクたちは「今後もそのまま通うのか」ということに関してはトモさんを除けば、正直まだわからないということだった。

シンガー系のライブイベントとアイドルイベントでは毛色が違うため、楽しむ音楽も異なる。アイドルとして推していたのであれば、その差は我々が思う以上にあるだろう。

歌はもちろん、撮影会などのモデル活動も行っている(写真:うしおゆりなさん提供)

「シンガーってことで今はまだ準備期間中なのですが、もっと私の歌を聞いてもらいたいと思います。もちろん今までのファンの方もついてきてほしいですね。みんながいるとほんと安心なので。離れてしまう人もいると思います。それはみんなが決めることなので、私は私で全力を尽くします

コロナ禍で始めたアイドル活動。人がいないフロアで歌い続ける日々。ひとりでも全力でライブを盛り上げてくれるヲタクの存在。ライブハウスという空間で推しとアイドルが交差する人間模様。SNSへの投稿ひとつで関係は強固にもなり破壊もされる

取材時の会食でうしおとヲタクたちとのちょっとしたオフ会のような雰囲気のなか、ヲタクが誰ともなく同じことを口にする。

「せっかくバズって取材も受けてるしさ、あの曲もっと歌ってよ。もっと聞きたいな」

「そうだね。大事に歌っていくよ」

うしおはこれからも歌い、きっとその前には彼女を推すヲタクたちの声が今日も響くことだろう。

松原 大輔 編集者・ライター

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まつばら・だいすけ / Daisuke Matsubara

富山県出身。編集者・ライター・YouTubeプロデューサー。中央大学法学部卒。在学中より故・永谷修氏に師事。大学卒業後、講談社生活文化局にて編集見習いとなる。その後、文藝春秋『Sports Graphic Number』編集部などで編集者・記者を経て、2018年に独立。書籍の企画、編集や執筆活動、YouTubeの動画制作・プロデュース、アーティストマネジメントなどを行っている。

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