中国経済は本当のところどこまで深刻なのか 秋以降の日本経済に影響が及ぶのは必至だ

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その謎解ときは不動産市場にあり。中国の1級都市、つまり北京や上海ではなおも住宅価格は上がっている。2級都市(重慶など)ではおおむね横ばいである。問題は3級都市と呼ばれるその他の地方都市だ。この「その他大勢」の住宅価格が盛大に下げている。

中国における不動産は、家計が保有する最大の財産である。GDPに占める不動産業のウェイトは12%と言われるが、波及効果を加えると25%にもなるという。

そして中国では、初めて住宅を取得する平均年齢が27歳と言われている。日本では40歳前後であるから、タイミングが極めて早いのだ。これは「男が家を用意しないと、嫁が来てくれない」から。なにしろ今の中国の20代人口は、男性が9100万人で女性が7900万人。「あぶれる」男が出ることは確実な情勢で、年頃の男の子がいると、親族郎党が寄ってたかって家を買わせてしまうのだそうだ。

もっともすでに人口減少が始まっている中国においては、27歳人口も今後は減り続けることになるから、不動産業の未来はもともと明るくはないのである。

恒大集団が債務不履行になっても、銀行経営は揺るがず

この問題がいかにややこしいか、例の恒大集団の内情から説明するのがよさそうだ。8月28日付の日本経済新聞に、「中国恒大、22兆円の開発用地が重荷 債務超過拡大も」という記事がある。ここに今年6月末時点の恒大集団のバランスシートが掲載されていて、その中身がまことに興味深いのだ。

恒大集団は総資産が1兆7440億元で、総負債は2兆3882億元。締めて6442億元の債務超過であり、普通の企業ならばこの時点でゲームセットである。1元=20円なので、総資産が34兆円で総負債が48兆円、バランスシートに14兆円の穴が空いている!と考えるとわかりやすいだろう。

それでは総負債の内訳はどうなっているのか。借入金は6247億元だから、せいぜい13兆円程度である。この程度であれば、恒大集団がデフォルト(債務不履行)したとしても、中国4大銀行(すべて国有銀行)の経営が揺らぐことはあるまい。

福本智之大阪経済大学教授によれば、中国は1990年代の日本における不動産バブル崩壊の過程を研究していて、「住宅価格の下落が不良債権問題を通じて金融不安を招く」怖さをよく理解している。だから不動産デベロッパーも、銀行からの借り入れは少ない。それは結構なことである。

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