慶応野球部「新旧2人の監督」が起こした地殻変動  「エンジョイ・ベースボール」に30年の試行錯誤

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たとえ僅差の試合で三塁走者がいても、試合の終盤でない限り前進守備を敷かないシフトは、元をたどればアメリカ流の合理的な発想法だ。走者が二塁のとき右方向に打つチームバッティングも不要とした。残塁が多くても併殺打でも構わない。自分の打撃を心掛けるよう、上田氏は貫いた。

推薦入試制度が追い風に

帰国後、上田氏がつくった「慶応義塾が優勝するための25の方法」には、こんな言葉が並ぶ。

 

徐々にチーム力が向上してきたところに、追い風が吹いた。2003年度から始まった推薦入試制度だ。9科目の成績の平均が4.2以上なければ対象にならないが、シニアチームで活躍していた選手のうち成績がよい選手に受験を促すことができる。それなりに技量を持った選手が毎年10人ほど入学してくるのはありがたかった。

2005年には45年ぶりに春の選抜甲子園大会に出場して準々決勝まで勝ち進んだ。2008年には春夏連続で、夏はやはり準々決勝で敗れた。春2回、夏2回の計4回、甲子園出場を果たしている。

上田氏が最も心を砕いたのは、ベンチ入りできない選手にプライドを持ってもらうことだ。

ベンチに入れなくても練習中に遠慮なく同僚のプレーに苦言を呈することを求めた。悔しい思いを抱えながらも、チーム力を上げるためには、彼らの苦言こそ必要で、それを受け入れられるチームを目指した。

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