海外ドラマでLGBTQ+はどう描かれてきたのか この30年でハリウッドは目まぐるしく変化した

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90年代ドラマには、毎回ではないもののLGBTQ+の人物が登場したり、関連するエピソードが描かれたりした。ただしその多くが、女性言葉を使うなどステレオタイプなもので、ストーリーの中核になることはなく、あくまでさらっと描かれることがほとんどだった。さらに特徴的なのは、LGBTQ+のなかでも、主に「レズビアン」「ゲイ」の登場が多いことだ。セクシュアリティに対するグラデーションについての理解は、この時代のアメリカのエンターテインメントでも乏しく、作中で描くことに抵抗があったのかもしれない。

時代に影響を与え、動かす存在に

2000年代に入り、LGBTQ+のドラマ内での描かれ方に変化が起きる。特筆すべきは、2004年に登場した、レズビアンの恋愛にフォーカスしたドラマ「Lの世界」だろう。キー局ではなく、ケーブル局「Showtime」での放送だったが(ここはまだコンサバティブ)、知られざるLGBTQ+のラブロマンスは、アメリカのみならず日本の海外ドラマファンの間でも話題になった。

演出に賛否はあったものの、LGBTQ+が主人公の作品は画期的だった。以来、LGBTQ+のキャラクターが、ドラマにメインキャラクターの一人として登場する作品が増えてきた。

例えば、「モダン・ファミリー」(2009年)のミッチェル&キャメロンのカップル。ゲイの夫婦として養子を受け入れたり、実家になじもうとしたり、ゲイカップルの日常が彼らの視点から描かれる。それはユニークだけれど決して茶化されたものではない。「ブラザーズ&シスターズ」(2006年)のケヴィン&スコッティも同様だった。ケヴィンは兄弟のなかで自分だけがゲイであることに深く悩んだこと、ともに乗り越えていくパートナーであるスコッティが見つかったこと、パートナーと分かり合い、乗り越えていくことの難しさに気づいたことなど、温かくてリアルな息遣いが描かれている。

女性言葉で話すなどステレオタイプな演出はあるが、「アグリー・ベティ」(2006年)のマークも、2000年代ドラマを代表するLGBTQ+のキャラクターだ。のちに主人公ベティの甥っ子・ジャスティンがセクシュアリティに悩んだとき、良き理解者になっていく。これまで表面的にしか扱われなかったLGBTQ+のキャラクターが立体的に描かれはじめたのがまさに2000年代だ。

さらに2010年代に入ってからは、Netflixなど配信系サービスの登場を機に、海外ドラマでのLGBTQ+の描かれ方が大きく変わる。LGBTQ+を主人公とする作品が多く登場するのだ。それらは批評家からの評価も高く、エミー賞やゴールデン・グローブ賞など名だたる賞レースにノミネートされていく。

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