「できるまでやる」偵察衛星発射への北朝鮮の覚悟 自国の安保のため、国民は「成功した」と思っている

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北朝鮮は10月に3回目の発射を行うと公言した以上、10月のどこかで発射する可能性が高い。10月10日は朝鮮労働党の創建記念日もあり、発射時期もその前後になるかもしれない。

ある自衛隊幹部OBは「失敗したロケットを再び打ち上げるには、1、2カ月という短期間ではできない」とし、またまた失敗に終わるのではと指摘する。ただ、韓国の専門家の中には、5月の発射は1段階エンジンで失敗、今回は3段階目まで進んだので「着実に進展している」という見方も少なくはない。

北朝鮮国内ではすでに「成功」?

2023年5月の発射の後、6月中旬に開催された重要会議である朝鮮労働党中央委員会第8期第8回総会では、金総書記が「偵察衛星発射の失敗は最も厳重な欠陥」と指摘、「発射を成功させる」とハッパをかけている。科学的には成功の前には失敗を重ねることは当然という見方からすれば、北朝鮮は成功するまで必ず発射を続ける可能性がとても高い。

一方で、2023年7月下旬に北朝鮮に入国したビジネスマンが東洋経済に話したところによれば、北朝鮮で人に会うたびに「軍事偵察衛星にわが国は成功した」と聞かされたと打ち明けた。5月の発射の直前直後の映像が国内で流され「成功した」ということに北朝鮮国内ではなっているのだろう。

では今回の失敗を国民にどう説明するのかとの疑問が湧くが、一方で「成功」は北朝鮮国内では既定路線、さらには既成事実になっているとも考えられる。それもあり、金総書記は「必ずやる、成功するまで発射する」という方針は、今後もなおさら変えられないはずだ。

福田 恵介 東洋経済 解説部コラムニスト

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ふくだ けいすけ / Keisuke Fukuda

1968年長崎県生まれ。神戸市外国語大学外国語学部ロシア学科卒。毎日新聞記者を経て、1992年東洋経済新報社入社。1999年から1年間、韓国・延世大学留学。著書に『図解 金正日と北朝鮮問題』(東洋経済新報社)、訳書に『朝鮮半島のいちばん長い日』『サムスン電子』『サムスンCEO』『李健煕(イ・ゴンヒ)―サムスンの孤独な帝王』『アン・チョルス 経営の原則』(すべて、東洋経済新報社)など。

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