同志社大学・太田肇教授の新モチベーション論(第3回)--古くて新しい大家族主義経営とは?

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同志社大学・太田肇教授の新モチベーション論(第3回)--古くて新しい大家族主義経営とは?

中小企業の経営者は2つの目標を同時に達成しなければならない。1つは生産性を上げること、もう一つは会社の人間関係をよくすることだ。これは車の両輪のようなものであり、伝統的なリーダーシップ論では定説となっている。

表彰も、それに一役買うことができる。一方では個人や組織の功績を讃え、他方では表彰をとおして社員の連帯感を強めたり職場の雰囲気を良くしたりすればよい。関西で美容院を経営するビューティサロンモリワキ(代表取締役:森脇嘉三)では、この2タイプの表彰がバランスよく取り入れられている。

優秀な成績を讃える表彰には、店舗を対象にした「スタッフ一人あたりの生産性最優秀店」「年間カラー比率最優秀店」「年間トリートメント比率最優秀店」「年間新規比率最優秀店」「年間総合売上げ最優秀店」、個人を対象とした「年間売上げ優秀者」「指名獲得優秀者」「個人販売優秀者」などがある。

これらの多くは、ずっと以前から存在した。そして、同社は右肩上がりで売り上げを伸ばし続けていた。

ところが7年ほど前に転機が訪れた。入社4年目の次期スタイリスト候補の13人の社員が大量に辞め、わずか4人になってしまった。売上げアップを追い求めるあまりに社員への配慮が行き届かなくなり、そのツケがスタッフに回っていたのだ。

そこで森脇社長は目先の業績を追う姿勢を改め、すべてのお客様に感動と喜びをプレゼントすることを会社の経営方針にした。お客様に感動と喜びを与えるには、スタッフ自身が感動し喜びを味わわなければならない。

その一環として取り入れたのが、次のような表彰制度である。

■ほころびメール

スタッフが感動した話を専務に送る。専務はそれを毎日全社員に送信するとともに、その中から内容の優れたものや件数の多い人が表彰される。また、感動した話は「ほころび新聞」に掲載される。

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