心理的安全性のために幹部が今日からすべきこと まずはメンバーの「トリセツ」をつくろう

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「チームの心理的安全性をつくり上げるのは管理職・上司の役割であり、責務である」というのも大きな誤解だ。チームの信頼と尊敬のバランスをつくるためには、管理職だけでなく、メンバー一人ひとりが当事者意識を持って、どのようにチームの中で自分の役割を果たすかを考えることが大切だ。

とはいえ、職場の心理的安全性を醸成するために、マネジャーが果たす役割は大きい。職場で最も影響力のあるマネジャーが、周りに対して心理的安全性を意識した行動を取るとよい。

第一歩はメンバーの話を聞くこと

その第一歩は、チームのメンバーの話を聞くことだ。メンバーが大切にしている価値観や判断基準、理想の働き方、将来の夢、何が好きで何が嫌いなのか、といったことだ。つまり、価値観レベルのことを知れば、メンバーがその人らしく、自分の力を最大限に発揮して働くための「トリセツ」を手に入れられる。

ただし、価値観レベルのことを聞いても、多くのメンバーはすぐに答えられないかもしれない。理由の1つは、日本企業の職場は自分の考えを口にすることが少ない点だ。日本の文化はコミュニケーションの土台となる考え方や価値観が共有されているハイコンテクスト文化なので、考えを言葉にすることに慣れていないのである。

しかし、答えられないからといって、決して自分の考えがないわけではない。頭の中の考えがまとまっておらず言語化されていない、あるいは何らかの理由があってその場では言えない、というケースが多い。だから1回答えてもらえなくても諦めず、日を改めて別の角度から2回、3回と聞くことが必要だ。

自分の心の内にある価値観を話すほどには、マネジャーに信頼を置いていないこともある。マネジャーのほうから自分の価値観や信念などを自己開示することも大切だし、日頃からメンバーのことを気に掛けるような会話をして信頼関係を醸成することも欠かせない。

どんなチームにも心理的安全性をもたらすことができる万能の特効薬はない。メンバー一人ひとりと会話のキャッチボールをして、少しずつ少しずつ関係構築をしていくことが大切だ。

杉山 直隆 オフィス解体新書・代表

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すぎやま なおたか / Naotaka Sugiyama

1975年生まれ。専修大学法学部卒業後、カデナクリエイト入社。ビジネス誌やビジネス書、企業の社内報・PR誌の執筆・編集を主に手がける。2016年に独立(屋号:オフィス解体新書)。社会人インターンシップ情報を紹介するブログメディア「30歳からのインターンシップ」を立ち上げ、取材活動をしている。共著に『課長・部長のための労務管理 問題解決の基本』『図解&事例で学ぶ入社1年目の教科書』『クイズ商売脳の鍛え方』など。

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