異形の鉄道「スカイレール」なぜ2024年春に廃止? わずか1.3kmで160m勾配、一見ロープウェー

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車両に相当するゴンドラには鉄道車両のような形式が与えられている。「200形」と呼ばれており、開業当時から運用されている車両で、最大で37人乗車可能と意外にも大容量である。進む方向は前照灯が点灯し、後ろ側は尾灯が点灯するなど、軌道法に則って運用されているのがわかる。

ラッシュ時間帯は7~8分間隔、日中時間帯は15分間隔と、アクティブな運行も可能である。開発元の1社である神戸製鋼所によると、建設費用はAGTの約3分の1と割安。走行性能は半径30mの急カーブにも対応できるという。

ただ、残念ながらこのスカイレールは、赤字が続いていることを理由に、2024年4月末に廃止になる予定だ。

実際に乗ってみた

廃止の発表後、乗りに行ってきた。JR瀬野駅からコンコース経由で、みどり口駅に行くことができるので、まずは駅舎外観を階段で降りてみる。ケーブルが動く音なのか、「ゴウンゴウン」と静かな街並みに響いている。

やがて、山の上から前照灯を輝かせながら降りてくるゴンドラには、たくさんの通勤客が乗っている。「これは面白い乗り物だ」と感じ、期待を込めて駅舎に入った。乗車券を買うと、表面にQRコードが入っている。これを改札機にスキャンさせて入場するのだ。QRコードを乗車券に使用しているのは、まだ全国的に珍しく、これは興味深いアイテムである。

住宅街に向かう「みどり中央行き」の車内は筆者1人。ロープウェーに比べると、車内は広く、吊り革もあるので通勤用途を考慮したのだということがわかる。

また、一般の鉄道車両と同様に、非常通報装置や防犯カメラも設置されているので安心できる。

発車のブザーが鳴り、ドアが閉まると、ゴンドラが動き出した。急勾配をぐんぐん上がっていく力強い登板力。上に向かって引っ張られるほどの感覚だった。途中駅の「みどり中街駅」の手前で、リニア軌道に入る。大きな振動はなく、スムーズに到着した。

乗降が終わり、再び動き出すとリニア駆動の音がして、駅間に入るとワイヤーで牽引される。終点の「みどり中央駅」は、スカイレールタウンみどり坂にあり、近くに小学校がある。朝の時間帯なので駅を降りると、学校の先生がいて、登校してくる生徒たちの見守りを行っていた。

その学校の先生の話によると、「スカイレールはみどり坂の導入をモデルに、交通が不便な住宅街やベッドタウンに売り込む予定だった。車両や施設を量産し、全体的に導入費用や維持修繕費を安く済ませようと考えていたようだ」とのことだ。

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