宇宙ベンチャー「ispace」が月面着陸で目指すもの CEOが語る成功への自信とその先の勝ち残り策

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――ミッション1の分析結果の公表から3カ月経ちました。外部からの評価はいかがですか。例えば、2025年に打ち上げを予定するミッション3の月面輸送の顧客開拓の状況は。

その辺りについて、今はあまり明確には申し上げられないところが多い。ただ、結果分析については会見の前後に日本だけでなく世界中で、お客様や各国政府にも個別にご説明をした。基本的には、非常にポジティブに受け止めていただいている。われわれの能力を次に向けて示すことが十分にできたのではないかと思っている。

ミッション1の月面着陸の失敗が、外部からの評価でとてもネガティブになる状況があったとすれば、それは原因がよくわからず、解決策もわからなかった場合だろう。幸いにしてわれわれはそのような状況にはない。

これから取るべき対策は明確で、残るはタッチダウンのところだけだ。その事実については、外部からは理解や評価をしっかりとしていただいていると感じている。

先頭集団にいることは必須

――競合であるアメリカのアストロボティック・テクノロジーやインテュイティブ・マシーンズも年内に月面着陸にトライします。袴田さんは5月の会見で「1番にはこだわらないが、他社から3、4年遅れると厳しい。先頭集団にいるのが大事」とコメントしました。その意図は何でしょうか。

もしこちらがなかなか月面着陸を成功できず、その間に他のプレイヤーが着陸に成功し、その後も毎年、1回から複数回、着陸成功を重ねて実績を積んでいくとする。そうなると、宇宙事業では実績を持っているほうが強いので、お客さんが全部、向こうに流れてしまう。

お客さんの立場からすれば、まだ成功していないところにリスクを取って月面輸送を頼むより、すでに実績があるところに頼みたいと考えるのは自然だろう。

月面着陸の成功で3、4年ぐらい遅れてしまうと明確に差がついてしまい追いつけなくなる。ただし、1年ぐらいの遅れなら、そんなに大きな差はない。宇宙事業では1年はほぼ誤差の範囲で、まだまだキャッチアップできる。だから、1番に達成する必要は必ずしもないが、何年も遅れるわけにはいかないと考えている。

はかまだ・たけし/1979年生まれ。名古屋大学工学部卒、米ジョージア工科大大学院で航空宇宙修士号取得。外資系コンサルで経営を学んだ後、2010年より民間月面探査レースに参加する日本チーム「HAKUTO」を率いた。2013年に運営母体を組織変更してispaceを設立しCEOに就任(撮影:梅谷秀司)
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