日本が調査、ジャワ島鉄道「準高速化」空しい結末 インドネシア政府が白紙化、中国絡む「民活」へ

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それにしても、どうして北幹線準高速化でまたも高速鉄道と同じ失敗を繰り返そうとしているのか。筆者は、どちらの原因も根底にあるものは同じと考えている。

結局は、インドネシアが求めていないものを日本側が提案して押し付けているということに尽きるだろう。高速鉄道にしても当時は時期尚早と判断されて国家戦略プロジェクトから削除されていたし、北幹線準高速化については高速鉄道での雪辱を果たさんとする安倍首相(当時)の精神論的部分があまりにも強すぎたように見える。

ジャカルタ―バンドン高速鉄道
中国が受注したジャカルタ―バンドン高速鉄道。開業に向けて試運転が進む(筆者撮影)

1つのプロジェクトに対して案件醸成だけで5~10年かかることはざらにあるが、突如の合意から具体化ありきで半年後にF/Sが始まるのは異例と言わざるをえない。インドネシア政府側が日本をつなぎ留めておくためにバーターとして北幹線準高速化事業を提案してきたという側面もあるが、突如降って湧いたような話に感情論から乗ってしまったことが間違いである。

日本には、ジャカルタMRT南北線、東西線という勝算あるプロジェクトがあるのだから、それらに集中するべきだった。不要不急、真偽不明のプロジェクトにわざわざ足を突っ込む必要などなかったのである。そして、仮に都市鉄道、高速鉄道双方を受注していたら、それこそ人材不足で現場は回らなくなっていた。

誰のためのプロジェクトなのか

日本の開発援助の基本は要請主義なのではないかと言われるかもしれない。しかし、厳密に要請主義が採られるのは、本体着工などに関わる円借款契約からである。それ以前のコンサル業務は日本の予算で実行されるため、ある程度は日本の主導で進めることができると言われている。実態はほとんど日本の都合で進められているほうが正しいかもしれない。

このような状況をコンサルのマスタープラン(M/P)策定案件にかけて、業界にはマスターベーションプランと揶揄する人もいる。つまり、事前のF/SやM/P策定などの部分と、本体の着工には継続性を求められていない。極端な話、F/Sまでやるのは日本の勝手、その先を決めるのは相手国である。

よって、今回のような事例は氷山の一角に過ぎない。インドネシアだけ見ても、政府に承認されなかったF/S、M/P案件などはいくつもある。

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