AI契約書審査サービスが開けた弁護士法の「風穴」 「法律分野のAI活用」を急加速させる指針が登場

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基本的な考え方は、①報酬を得る目的で②権利関係に関する争い(事件性)がある事案について③法律の専門知識に基づいて法律的見解を述べる「鑑定」をする――という3要件をすべて満たした時に違反の可能性があるというものだ。ガイドラインは「いずれかに該当しない場合には、本件サービスの提供は、弁護士法72条に違反せず」と明確に示した。

①の報酬は、無償で利用できても、サービスサイトの広告で収入を得ることも該当しうるため、事業として提供することは難しい。②の事件性は、取引当事者間で紛争が生じた後の和解契約などが該当しうると示された。しかし、安定的に取引をしている会社の間の契約は該当しないことが多いと考えられるので、サービス提供会社の間では「事件性がないことで合法と判断できる」という見方が強い。

さらに、③の鑑定に、従来の契約書審査だけでなく、作成や契約締結後の管理についての見解も示されたことで、事業の可能性が広がったと受け止められている。ただし、「個別の事案」についてのサービスの提供には、作成、審査、管理のいずれのサービスでも「該当し得る」という見解が示された。

個別的な事案は人間の弁護士が対応

審査の場合、「個別の事案における契約に至る経緯やその背景事情、契約しようとする内容等を法的に処理して、当該処理に応じた具体的な修正案が表示される場合」は「該当し得る」という。

そこで、鑑定で個別の事案を扱えるサービスをしても、事件性がない契約書なら問題ないと考えられるかを法務省に確認した。その回答は次のようなものだった。

「個別的な事案の経緯や背景事情を踏まえて審査ができるということは、事件性のある契約書の審査をする能力があるシステムといえる。非弁行為が問われるのは利用者ではなくて事業者だ。だから、利用者が事件性のある契約書を扱わなくても、事件性がある契約書を審査できるようなシステムを提供することは弁護士法違反に問われる可能性がある」

これをサービス提供事業者に聞くと、「個別的な事案の事情を踏まえた対応は人間の弁護士がするようなサービスになる。いまのシステムはそれができるまでにはなっていないし、そこまでにはまだ時間がかかる。当面は問題ない」と話した。

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