名前が「エレガンス」ゲイの黒人監督の壮絶な半生 米国で人気作を続々生み出す「A24」の注目作

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――注目の映画会社であるA24で映画を作るというのは世界中の映画監督たちが夢見ることのひとつだと思いますが、デビュー作がA24で作られることになったということで。まさにアメリカンドリームじゃないかなと思うんですが。

本当にその通りだと思います。“Oh my god!!!!!!!”と叫びたくなるくらいに興奮しています。2017年にこの脚本を書いていた頃から、この作品は絶対にA24向きだから、一緒に組みたいと思っていたんですが、彼らが僕の存在に気づいてくれたのは2020年のことだったので。

ちょっと時間がかかってしまいました。でもこうやってA24で公開できたことによって世界各地、アメリカ各地を回ることができました。(A24が手がけ、アカデミー作品賞をはじめ7部門で受賞した映画)『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』のダニエルズ監督やミシェル・ヨーとも仲良くなれたし、(アカデミー賞主演男優賞を獲得したA24作品)『ザ・ホエール』のブレンダン・フレイザーとも仲良くなれました。

そういう人たちと交流できるというのは本当にアメリカンドリームだなと思いますね。

――劇的な変化ですね。

本当にそう思います。だって20年前はホームレスのシェルターにいたわけですから。これからもできる限り彼らと一緒に映画を作っていきたいと思っています。

A24に入り大きな影響を受ける

なんといってもA24作品といえば、アカデミー賞作品賞をとった『ムーンライト』のバリー・ジェンキンス監督の存在が大きくて。常々、彼のことは尊敬してきましたし、彼の作品からも大きな影響は受けています。

もちろんこの状況に浮かれてはいけないですし、自分にとって本当に重要なことだと思ってるので。おごることなく、これからも彼らと一緒に素晴らしい作品を生み出していけたらなと思っています。

――映画の冒頭で、老人のホームレスが「君は自分の望むものになれる」と主人公フレンチの背中を押すシーンがありましたが、今の監督だと、そのセリフに感じるものがあるのでは?

そのセリフに対してフレンチは「そんなのうそだ」という感じで返したと思うんですが、やはり多くのアメリカの若者たちは、今の社会状況において、何でも可能だと言われても、そんなのはうそだ、と壁にぶつかってしまうのは明らかだと感じてしまうと思います。今はそういう社会状況ですからね。

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