「生成系AI」でも世界から遅れている日本の末路 ビジネスでの利用がまったく進んでいない

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「これはすべてを変える。AIは教育と学習を根底から覆そうとしている」と、多くの人が考えている。保護者のほぼ 64% が、教師や学校は学業でのChatGPTの使用を許可すべきだと考えている。容認するだけでなく奨励すべきだとの回答が28%あった。

日本では、東北大学の大森不二雄教授が、6月2日までの10日間、オンラインで調査を実施した。朝日新聞の記事(2023年6月8日)によると、学生の32.4%がChatGPTを使用したことがあると回答し、14%が課題に使用したことがあると回答した。ChatGPTを課題に使用した人のうち、77.5%がライティングの向上に役立ったと回答し、70.7%が思考力の向上に役立ったと回答した。

アメリカでの別の調査によれば、学生のほぼ90%が家庭教師よりChatGPTのほうが優れていると考えており、 すでに30%程度の学生が家庭教師からChatGPTに切り替えた(7月9日の本欄記事を参照)。

ビジネスより教育での利用が先行している

上記のさまざまな調査から、 おおよその傾向として、 次のことが言えるだろう。

第1にビジネスにおいても教育においても、ChatGPTの利用比率はアメリカのほうが日本より高い。

第2に、教育・学習における利用は、ビジネスによる利用よりも進んでいる。企業での利用は(とくに日本の場合には)これからという段階だが、 教育 ・学習面における利用はすでにかなりの程度進んでおり、 現実の問題になっている。学習における利用は、個人個人がChatGPTを使えば、すぐにでもできることだ。そして効果が高い。だから利用が進んでいるのは当然だとも言える。 

それに対して、企業での利用の場合、いかなる業務に使えばよいかという問題がある。そして、利用のために体制を整えなければならない。その上、企業機密の漏洩といった問題もある。このため、すぐには使えないという場合が多いのだろう。

教育・学習面におけるChatGPTの影響は、日本でも、すでに現実のものとなっている。

朝日新聞の記事(7月6日)は、大学の入試体制(とくに、総合型・学校推薦型選抜)が大きな影響を受けるだろうとしている。また就職試験におけるエントリーシートも、ChatGPTによる文案作成に対応することを迫られている(朝日新聞、6月26日)。

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