語られない「台湾有事」ロシアの重要な立ち位置 中国に「引き摺り込まれる」可能性もある

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この傾向の「頂点」は、2022年2月のプーチン大統領の北京訪問だった。首脳会談では、プーチン大統領と習近平国家主席は「ロシアと中国の関係は冷戦時代の政治的・軍事的同盟よりも優れている」という主張を盛り込んだ共同声明に署名した。声明はさらに、「両国間の友好は無限であり、協力の禁止された分野はない」とも述べている。

日本を含む地域諸国にとって最も懸念される点は、中国とロシアの軍事協力の深化である。ロシアと中国は2005年に初の軍事演習を実施し、その後 20年間で演習の規模は着実に拡大し、頻度も増加してきた。さらに近年両国は、演習中の共同作戦を促進するため、臨時の合同司令部を立ち上げるようになった。

過去にロシア政府は、中国への最先端兵器の販売を拒否した。しかしクリミア併合後、ロシアは心変わりし、S-400対空ミサイルとSU-35戦闘機の中国への輸出に同意。現在、ロシアと中国はいくつかの共同軍事生産プロジェクトを進めているが、この中には重量物輸送ヘリコプターと通常動力潜水艦の共同開発が含まれる。

また、両国は人工知能と宇宙の分野でも協力しており、ロシアはさらに、中国の弾道ミサイル発射を検知する早期警戒システムの開発を支援しており、これにより中国の核抑止力が強化される。

ロシアの対台立場

ロシア政府の台湾に対する立場は単純かつ首尾一貫している。中華人民共和国を最初に正式に承認した国はソビエト連邦だった。これは中華人民共和国が設立された翌日の 1949年10月2日のことだ。10月3日、ソ連は台湾に逃げた中華民国政権との中ソ友好同盟条約を破り、関係を全部断った。1950年代、ロシア政府はアメリカ軍全員の台湾からの撤退を求めた。

ソ連崩壊後、ロシア政府は「1つの中国」という政策を維持した。ロシア連邦の正式な立場によれば、中華人民共和国政府は中国を代表する唯一の合法的な政府であり、台湾は中国の不可欠な一部である。さらにロシアは、2005年に中国政府が導入した反分裂国家法への支持を表明した。この法律は、中国政府が台湾の独立を阻止するために非平和的手段を用いることを認めている。

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