AIは今後「ドラえもん型」を開発すべき納得の根拠 きちんと認識すべき「生成AIの本質」とその怖さ

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栗原:アテンション・エコノミーにおいては、僕らが「考えない」「自分で考える時間ないし、調べるのが大変」という状況が問題の1つとしてありました。

しかし、一瞬のうちに何かしらを調べてくれる生成AIが出てくることで、それを使いこなして、きちんとものを考えるようになる層が厚みを増す可能性はあるのだと思います。さらに、そういう人たちのなかには、皆に注目されることよりも、自分なりの意見をしっかり考えたいと思う人も、少ないと思いますが出てくると思います。

栗原 聡(くりはら さとし)/慶應義塾大学大学院理工学研究科修了。NTT基礎研究所、大阪大学産業科学研究所、電気通信大学大学院情報理工学研究科などを経て、2018年から現職。博士(工学)。電気通信大学人工知能先端研究センター特任教授、大阪大学産業科学研究所招聘教授、人工知能学会倫理委員会アドバイザーなどを兼任(写真:本人提供)

単に注目されればいいということではなくて、思慮深くすることがAIを通してフィードバックされ、それが創造性につながり、あるいは付加価値が付いて戻ってくるという仕組みが出てくれば、それこそがあるべき報酬系(欲求が満たされたときや、満たされるとわかったときに活性化し、快感をもたらす脳内のシステム)なのだと思います。

考える時間ができても、人間は考えない?

山本:ルーティンのような情報整理とか、“前さばき”をうまく生成AIにやらせれば、そこで浮いた時間を重要なことに使える。熟慮ができたり、議論が深まったりすることで、創造性が生まれることもあるわけですね。

栗原:はい。無駄な時間がなくなることで、「考える時間」ができてきますし、自分のクリエイティビティをアンプリファイ(増幅)するために使う人も出てきます。そして、それを見た周りの人も、いいなと思えば真似するでしょう。いずれにせよ今は皆、考えなくなっているというよりは、考える時間がなくなって、考えられなくなっているのですよね。

山本:ただ、生成AIの利用でういた時間を熟慮にあてるという発想は、どこかまだ人間を信じている部分があるような気がします。仮に人間も反射的な生き物だとすると、余暇ができても、それをショート動画の閲覧やスマホ・ゲームに使うとか、結局アテンション・エコノミーの世界の中で時間を消費していくだけだという見方もできるかもしれません。

山本 龍彦(やまもと たつひこ)/1976年生まれ。2005年、慶應義塾大学法学研究科博士課程単位取得退学。博士(法学)。桐蔭横浜大学法学部専任講師、同准教授を経て現職。2017年、ワシントン大学ロースクール客員教授、司法試験考査委員(2014年・2015年)(撮影:尾形文繁)
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