「大学か職人か」10歳で決めるドイツと日本の違い 子供がシビアに才能を見極められるのは幸せか

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この10歳での「選択」は、小学校4年生時点での子供の成績、子供の性格や子供自身の意思、担任の先生や、親の意見など総合的に見て判断しますが、他の国(イギリスなど)と比べ、その選択が早いということに関しては、実はドイツの中でも賛否両論があります。

否定的な意見としては、「これから、どうにでも成長するかもしれないのに、10歳で将来を決めてしまうのは早すぎるのではないか」という見方です。その一方で10歳での選択に関しては、「早い段階から将来に向けて準備ができる」という利点もあります。

日本では、全員が中学生になり、多くの人が高校生になりますが、「将来の(職業的な)夢」に関してはまだ分からない10代の子も少なくありません。またそれが許されているシステムでもあります。よく言えば、日本の学校のシステムは「長く夢が見ていられる」システムなのかもしれません。

10歳で選択し、ほかを諦めるドイツ人

逆にドイツだと、10歳でハウプトシューレ(将来は職人になる。または大学進学が必要ではない職業に就く)を選んでしまえば、将来大学へ行ったり、大学を出ていないと就けない職業に就くという夢は見なくなります。早い段階での「諦め」がそこにはあります。

「諦め」と言うと、どうも響きが悪いのですけど、10歳で一つの道へ突き進んでいくやり方は、見方によっては潔いとも言えるわけです。本人はまだ思春期に達しておらず、その段階で将来への(職業的な)準備がスタートする、ということを考えると「迷いがない」状態の「良い意味での諦め」はある意味合理的です。

ドイツでは10歳の子であっても、周囲の大人(先生や親)がその子の才能や資質というものをシビアに見ていて、それに沿った将来統計をします。そこが、子供に関しては、あくまでも「努力」を重視し、「才能」という言葉を使うことに慎重な日本との大きな違いだと思います。

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