「撮影罪」から漏れた"アスリート盗撮"驚く悪質さ 注意すると逆ギレも…取り締まりは可能なのか

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この数年「アスリート盗撮」の問題が注目されるにつれ、ミズノにも「お腹が隠れるものを作れないか」といった指導者からの問い合わせが数件寄せられているという。

「現状、個別に相談いただいた高校や大学の意見を収集している状況です。幅跳びや短距離の選手からは、下のショーツがめくり上がりやすく、気になるという声もあります。今のユニフォームの形を変えることになりますが、走っていてもつっぱり感がなく、動きやすい素材や設計を模索しているところです」(美濃辺さん)

美濃辺さんは「高校時代がポイントになるのではないか」と話す。

「選手に話を聞くと、高校時代からずっとセパレート型で下はショーツで慣れてしまったので、今さらタイツを履くと丈が長くて邪魔だと感じるという声がありました。セパレート型デビューをする高校時代から、指導者側が選手の好みによってユニフォームのバリエーションを増やしてあげるといった気遣いが必要になってくるのではないでしょうか」

日本陸上競技連盟(JAAF)も今年4月、「デザイン、配色が同一であれば、選手によりユニフォームのタイプを選択することは、ルール上問題ありません」とし、指導者に対して「選手がユニフォームタイプをそれぞれ選択できるような環境づくりにご協力をお願いいたします」と呼びかけている。

法律で規制することができるのか?

衆議院・参議院それぞれにおける「撮影罪」の附帯決議(政府が法律を執行するに当たっての留意事項を示したもの)では、アスリートやCAの盗撮が社会問題となっている実情を踏まえて、衣服により覆われている部分を性的な意図を持って撮影する行為の規制についても検討するよう言及された。

ただ、これまでの法制審議会の議論では、あとから一部だけを強調して加工できることなどから、処罰する対象を明確に規定できるのかという懸念も示された。

これまでアスリート盗撮の取り締まりには、「卑わいな言動」を禁じる各都道府県の迷惑防止条例や建造物侵入罪が適用されてきた。着衣の上からの撮影行為でも、執拗にされた場合には、「卑わいな言動」として迷惑防止条例違反になることを認めた最高裁判例もある(平成20年11月10日)。

日本学連理事の工藤洋治弁護士は「最高裁では、『不明確だ』という被告人側の主張に対して、『不明確とはいえない』と判示されています」と指摘する。

「着衣の上からの撮影は線引きが不明確という意見に対しては、最高裁も不明確ではないと言っていると反論したいところです。最高裁判例を参考にしながら、今後処罰すべき行為を明確かつ適切な表現にする必要があります」(工藤弁護士)

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