慶應野球部「勝てるチーム」に変えた監督の手腕 「常勝リーダーのコミュニケーション」の共通点

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日本では、上意下達の組織・団体がいまだに多く、「監督やリーダーの言うことは絶対で、下は盲目的に従うべし」というカルチャーがしぶとく残っています

特に体育系の組織・部活などでは、トップダウンで命令し、怒鳴り、叱責し、強制するというコミュニケーションが一般的です。

しかし、そうした独断的で、押しつけがましい「指導」が、選手の個性や考える力を奪っている側面は否定できません。

成果を出すリーダーほど「命令しない」「強制しない」

一方で、成果を出すリーダーには「命令しない」「強制しない」「話を徹底的に聞く」「対等な立場で対話する」「過度に教えず、自ら考えさせる」「怒鳴らない」「相手を尊重する」という共通項があります。

「指導者側と選手が上下関係にならないこと。そうなってしまうと、そこに現れるのは一方通行の伝達や命令で、選手は服従、従属するだけとなり、それを正常なコミュニケーションと呼ぶことはできません」
「こうした一方的な伝達・命令が当たり前でしたが、これを双方向型に変えていくことが理想です。指導者側から伝える場合もあれば、選手から言うケースもある。よりフラットな関係性を慶應義塾高校野球部では目指しています」

と森林監督は著書『Thinking Baseball――慶應義塾高校が目指す"野球を通じて引き出す価値"』の中で述べています。

「私が気を付けているのは、相手の話を聞くことです。話を聞くと言うことは、相手の思いに触れることです。選手の話はできるだけ聞くようにします。聞き手にならなければ、相手の悩みや苦しみに近づくことはできません」(『栗山ノート』より)
「勝つためですね。勝つために。このメンバーが集まった時に、どういう人間関係が出来たら勝てるのかを考えたら、自然とキャプテンを置かないという選択肢になったんです。このチームでは横同士が、こういう野球をやろうぜって話し合った方が良い野球になるのは決まりきっていると思いました」「年齢が上であるとか下であるとか関係なく、一人一人がチーム全体を引っ張ってほしい」(栗山監督のNHKインタビューより)
「私たち大人に求められることは何なのでしょうか。私はひとつには傾聴力だと考えます。大切なことは、伝えたいことがあるならまずは聞く、ということです」(須江監督の著書『伝わる言葉。失敗から学んだ言葉たち』より)

皆、驚くばかりに同じようなことを言っていると思いませんか。

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