明治末期から流行、女性記者たちの変装潜入取材 『化け込み婦人記者奮闘記』書評

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『明治大正昭和 化け込み婦人記者奮闘記』平山亜佐子 著
明治大正昭和 化け込み婦人記者奮闘記(平山亜佐子 著/左右社/2200円/288ページ)
[Profile]平山亜佐子(ひらやま・あさこ)/文筆家、エディトリアルデザイナー、挿話収集家。戦前文化、教科書に載らない女性の調査をテーマとする。著書に『問題の女』『戦前尖端語辞典』『明治大正昭和 不良少女伝』『20世紀 破天荒セレブ』がある。唄のユニット「2525稼業」に所属。

戦前の統治エリートたち(男性ばかりだった)の邸宅を調べて本を書いたとき、数としては圧倒的に少ないはずの「婦人記者」(女性記者)の邸宅訪問記が役立った。男性記者たちが主人との会話の内容ばかり書く一方、婦人記者は邸宅や家庭の様子を細やかに書き留めていることが多かったからだ。

個性光る「化け込み」記者

本書はその婦人記者たちが、仮の姿をまとった潜入取材と暴露記事に光を当てる。かつて、こうした潜入取材を「化(ば)け込(こ)み」と呼んだ。なんと秀逸な表現だろう。当時の男性記者が貧民窟(スラム)などに潜入したルポは、貧困の実態を記録したことをもって評価されてきた。ただ、明治末期から日中戦争開戦ごろまで流行した婦人記者の「化け込み」は多くの読者にとって初耳だろう。

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