物流の風雲児「脱・下請け」で売上高3倍の大胆戦略 急成長のSBSがM&Aで得た「勝利の方程式」

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――買収した会社をどのように立て直してきましたか?

2004年に雪印物流(現SBSフレック)、2005年には東急ロジスティック(現SBSロジコム)を取得した。当時のSBSロジコムはトラックを1000台所有して売上高270億円、営業益10億円。うち物流事業の営業益は2億円だった。業績は横ばいで営業は3~4人。新規開拓はほぼやっていなかった。

償却済みの自社倉庫が50ほどあり、安く貸していた。これらを適正価格に値上げし、倉庫で働く正社員スタッフを大幅に減らしてパート・アルバイトを増やした。社員は営業など付加価値のある仕事に割り当てたことで、倉庫がローコストで運営でき、営業も増えて戦える集団になった。

営業すると新しい倉庫が必要になる。安い土地を買って倉庫を作り、信託受益権(賃料などを受け取る権利)にして、賃料は坪3000円などで借りる契約を結び3500円で顧客に貸す。倉庫内のオペレーションも全部SBSが担当する。

その後、信託受益権を売って収入を得ても、賃料は継続的に入ってくる。こうしたスキームで安い倉庫を手に入れることができる。安い倉庫は3PLにとっていちばん重要な要素だ。現場を磨いたことで、コンペでは大手にも負けなくなった。SBSロジコムは売上高が約700億円、営業益は50億円に成長した。昇給もして、いい会社になっている。

2018年に取得したリコーロジスティクス(現SBSリコーロジスティクス)も同じ。既存の社員で営業を強化する。ローコストで運営する力を磨き、倉庫を開発し、システムに投資する。勝てる方程式がわかってきた。

利益の出し方を教えていく

――実際は買収後の改革が簡単に進まない例は多くみられます。

物流といっても鉄鋼の運送から倉庫の作業までさまざまだ。一つずつ顔を合わせて話をして、こうすれば利益が出ると教えていく。倉庫やトラックでの荷物の積み方にしても、空気をなくして容積いっぱいにできれば儲かる。グループで仕事を振り分け、ほかのグループ会社の倉庫も活用する。物流はそこまでやらないと利益が出ない。

改善には時間がかかるし、人事だけでもだめ。ウエットな人間関係を作って一緒に飲み、ご飯も食べて、夢を語る。いきなり指示するのではなく、やってみせる。相手も納得してやる気になれば伸びていく。

リコーロジはホームセンターやドラッグストアの仕事も獲得している。メーカー子会社のときはできなかったが、今ならできる。システムはわれわれが提供するし、建物も投資する。すると物流会社だから水を得た魚のように頑張るわけです。営業の相談も来るようになり、いい循環ができる。

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