「僕はモラハラ夫」…本人が遂に悟るに至った経緯 「よかれ」と思って妻にしたことは暴力だった(前編)

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自分は「よかれ」と思って、相手が望んでもいないことを、無理やりやらせていたわけです。そのうち妻が泣いたりふさぎ込んだりすることが増えて、それでまた喧嘩になって、彼女を傷つけてしまう。

妻とクリスマスディナーを予定していた前日にも、同じような喧嘩が起きてしまって。そのときに「この人のことをすごく好きで大切にしているつもりなのに、泣かせたりふさぎこませたりしてしまうのは、僕が“間違った関わり方”をしているのかもしれない」と、ふと思ったんです。

それまでは「この人が怠惰だから、こうなってしまう」と思っていたんですが、そうではなくて「もしかすると自分がよかれと思ってやっていることが、この人にとってよくないのかもしれない」と気付いた。その辺りから、僕のなかで「加害者変容」がガッと始まった感じです。

(画像:『99%離婚 モラハラ夫は変わるのか』より)

――こちらは「よかれ」と思ってやったのに、なぜ喜ばない? と思ってしまうこと、私もあります。でも、それが相手にとっては加害行為なのですね。

そうですね、かなり普遍的な「暴力」だと思います。自分が望む形に相手を変えようとする、期待と失望によるコントロールです。その人がそのままでいることを受け入れず、その人を「自分にとってよいもの」に変えようとするわけです。夫婦間に限らず、職場や子育て、友達関係においてもよくあると思います。傍から見ると必ずしも悪くないような加害行為もあるので、わかりづらいですよね。

「ケアの欠如」が暴力の本質

――それも「暴力」なのですね。

そうです、暴力というのは「ケアの欠如」なんだと思います。僕は変容プロセスのなかで、さまざまな領域の専門書を読んできて、そういうふうに考えました。

僕がやっていたことは、ケアの真逆です。その人が持っている感覚や感情、考え方、そこから生み出される言動を、全部否定していた。本人が「私はあまりやりたくない」「これを生業にしたいとは思っていない」と言うのに対して、「あなたは天才なのだからこれをやるべき。こんなに才能を信じてもらって支援をされることを、嬉しく思うべき」と言っていた。

次ページ自分の不完全さと向き合い、依存的な言動が消えていくまで
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