フェラーリとの戦い降りたランボルギーニの矜恃 「価値観のヒエラルキー」を設ける重要さ

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例えば、ある企業同士がライバル関係にある場合、互いに集中しすぎてチャンスを見逃し、イノベーションを起こす機会を失ってしまうかもしれない。私自身も起業家で、いくつかの会社を立ち上げてきましたが、ほかのスタートアップや同じ空間にいる人たちに集中しすぎて、彼らがやっていることに絶えず目を向け、彼らに追いつき、遅れを取らないようにしようということだけに気を取られていた時期がありました。

最高のイノベーションは、企業が自分たちの業界の外で起こっていることからインスピレーションを得たときに起こります。自動車エンジンを発明したヘンリー・フォードは、製造業に従事していました。

しかし、彼は屠殺場に入って、豚が屠殺されて切り分けられる様子を見て、組み立てラインのアイデアを思いつきました。ライバルに固執しすぎて、ゼロサムゲームになってしまうという意味で、競争が不健全になるタイミングを見極めることが重要です。

フェラーリとの戦いを「降りた」ランボルギーニ

――本の中にもランボルギーニの例が出てきましたね。フェラーリを目指してスーパーカーを作ったけれども、「最後までは戦わなかった」。すなわち、レースの世界までには突っ込まなかったと。とはいえ、多くの企業にとってどの時点で競争から手を引くかを見極めるのは簡単なことではありません。

ランボルギーニには、ライバル関係から離れるタイミングを見極める意識がありました。フェラーリとのライバル関係は、ある時点までは彼にとって有益なものでしたが、それが会社だけでなく、私生活にも悪影響を及ぼしていることに気づいたのです。それが、ランボルギーニにとって重要なカギでした。

彼は、会社という枠を超えた、大事にしている価値観を持っていました。それは家族であり、息子であり、父親としての役割だった。そして、人生の最優先事項は、レースでエンツォ・フェラーリに勝つことではないと判断し、退任したのです。

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