日本企業「X世代以上が牛耳る」事の根本的な問題 世界で成功する組織は当たり前にフラット

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イノベーションはどこで生まれるかと言えば、それは間違いなく「現場」です。フランス革命も明治維新も現場から起きています。革新的なことは現場からしか生まれ得ないのです。なぜかといえば、変化の兆候は真っ先に現場で発生するからです。重要なのはその兆候を見逃さないことと、それを共有できる組織を作ることです。

リーダーの役割は、現場に接しているたくさんのメンバーを束ねることにより、群衆の英知(ウィズダム・オブ・クラウド)(出所:「INSEAD流 リーダーシップの心理学(2)英知は「群衆」の中にしかない 環境激変時代の決断術」広野彩子、日経ビジネス、2020/6/12)を集めることなのです。そのためには誰もが自由に発言できる環境が必要であることは言うまでもありません。だからこそ、フラット型組織でなくてはならないということです。

大事なのは「聞く力」です。この力で現場の情報をどんどん引き出していく。マネジャーの仕事は、最終的に決断を行い、その責任を負うこと。これが、フラット型組織におけるマネジャーの仕事です。

アリババの「変身」

ここで1つ、極めて興味深い例を紹介しましょう。中国のアリババです。アリババはジャック・マーによるスタートアップとして1999年に始まった企業ですが、BtoBの電子商取引サイトの運営から始まり、電子決済サービスやAIによる都市開発などさまざまな最先端案件を手がけており、世界で最もイノベーティブな企業の1つに数えられています。

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なぜ、アリババはこれほどの成功を収めることができたのか。そのターニングポイントが、フラット型組織への変革だったのです。

起業直後のアリババはジャック・マーの独裁企業でした。スタートアップには強力なリーダーシップが必要ですから、トップダウンは当然のことです。組織が大きくなるにつれて民主型の組織運営方法も導入しましたが、最後の意思決定はマー主導でした。

しかし、2013年頃に、アリババはセルフチューニング(自己調整)型の組織に変えました。トップダウンから、誰もが自由に意見を言える組織に変えたのです。複雑なビジネス環境に適応していくためにはトップダウンではなく、現場の自己調整型の組織に進化すべきだと考えたからです。

その結果としてアリババは初期のビジネスモデルから脱却し、ファイナンスやAIなど幅広い分野に進出。2013年にジャック・マーが会長に退いたあとも自律的に成長を続けられる組織となっていきました(出所:「The Self-Tuning Enterprise」Martin Reeves, Ming Zeng, and Amin Venjara, Harvard Business Review, June, 2015)。

アリババのような強烈なトップダウン企業も変わることができたのなら、あなたの組織もきっと、変わることができるはずです。

山本 真司 山本真司事務所代表、立命館大学大学院経営管理研究科専任教授

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やまもと しんじ / Shinji Yamamoto

慶應義塾大学経済学部卒業、1987年シカゴ大学、シカゴ・ブース・スクール修了(MBA with Honors)、ボストン・コンサルティング・グループ、A.T.カーニー、アジア戦略グループ代表、ベイン・アンド・カンパニー・ジャパン東京事務所代表パートナーを歴任。約30年にわたる企業戦略コンサルティング経験。2012年まで早稲田大学スポーツ科学大学院客員教授、2011~21年経営管理研究科客員教授。2022年より現職。

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