「教養」を習得すべき"たった1つ"の本質的理由 教養とは「善く生きる」ための実践知である

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『ソクラテスの弁明』では、紀元前399年、アテナイの民衆裁判所の市民陪審員を前に、ソクラテスが弁論を始めるところから話は始まります。

無罪有罪決定投票と刑量確定投票を受けて、ソクラテスが聴衆に向かって最後の演説をする場面までが描かれています。

この続編『クリトン』では、裁判から約30日後、死刑執行を待つ獄中のソクラテスに対して、旧友のクリトンが逃亡を勧めに来るところから話は始まり、その説得が失敗に終わる場面までが描かれています。

そして、最後の『パイドン』では、ソクラテスの仲間のパイドンが、哲学者のエケクラテスから、ソクラテスの最期について尋ねられるところから話は始まります。

死刑執行当日、ソクラテスの弟子たちが朝一番で牢獄に出向き、そこでソクラテスが「魂の不滅」について説き、毒杯をあおる場面までが描かれています。

プラトン「4つの徳を追求すべき」

「西洋哲学の祖」と呼ばれるプラトンは、師であるソクラテスの思想を受け継いだうえで、独自の哲学体系を構築しました。

その思想は、「真・善・美」という言葉に集約されます。真理の追求、善行の実践、美的な価値の追求こそが、人間の成長や人間社会の進歩にとって重要だと考えたのです。

プラトンは、個人の幸福というのは、善に従って行動することによってもたらされると考えました。そのために、知恵、節度、勇気、正義の4つの徳を追求すべきと主張しました。

ここで言う知恵は理性を用いて真理を追求する能力であり、節度は欲望や情念を制御する能力、勇気は困難や恐怖に立ち向かう意志の力、正義は各々の役割や責任を適切に果たすことです。

プラトンの弟子で「万学の祖」と呼ばれるアリストテレスも、その著書『ニコマコス倫理学』において、徳を善の基礎として位置づけています。

人は、節制、勇気、正義、思慮深さといった徳を実践することによって善く生きることができ、それが人間にとっての真の幸福である最高善(エウダイモニア=善き守護者(ダイモン)に護られている状態)に至る道だと考えたのです。

こうした、個人としての「善い人生のあり方」という議論を発展させる形で、共同体としての「善い社会のあり方」を構想したのが、プラトンの『国家(ポリテイア)』であり、アリストテレスの『政治学』だったのです。

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