日本製鉄、最高益なのに「PBR0.65倍」のジレンマ 今期「減益・減配予想」で急落の株価は停滞続く

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2025年の鹿島地区(茨城)の高炉1基の休止は決定済みで、八幡も休止すれば日本製鉄の国内高炉は9基まで減ることになる。開発中の高炉での一部水素還元技術を実装することで、残った高炉のCO₂削減も着実に進めており、こうした技術開発や設備実装には国の補助も求めていく方針だ。

日本製鉄の高炉
国内の余剰生産能力を削減し、値上げ力を強化したことで収益力は着実に高まっている。だが、カーボンニュートラルへは険しい道のりが待っている。写真は君津地区(千葉)にある一部水素還元の試験高炉(編集部撮影)

カーボンニュートラルへの道のりが険しいのは確かだが、世界の鉄鋼業を見回して日本勢が出遅れているわけではない。むしろ、世界の高炉大手の中で日本製鉄は低炭素化で先頭ランナーといっていい。ならばできることは、CO₂排出量を着実に引き下げていくことしかない。

個人株主向けにIRを強めていく

もちろんさらなる収益力強化にも余念がない。

国内の既存製品でのさらなるマージン拡大は難しいため、今後は高付加価値品の比率を一段と増やしていく。代表的な製品である無方向性電磁鋼板は増産投資を積み増した。成長ドライバーと位置づける海外はインドを中心に生産能力を増強している。「成長戦略と企業価値を上げる努力を継続していく」と同時に、「個人株主向けにIRを強めていく」(森副社長)。

結果を積み重ねていけば、いずれ株式市場も評価してくれるはずだ。

山田 雄大 東洋経済 コラムニスト

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やまだ たけひろ / Takehiro Yamada

1971年生まれ。1994年、上智大学経済学部卒、東洋経済新報社入社。『週刊東洋経済』編集部に在籍したこともあるが、記者生活の大半は業界担当の現場記者。情報通信やインターネット、電機、自動車、鉄鋼業界などを担当。日本証券アナリスト協会検定会員。2006年には同期の山田雄一郎記者との共著『トリックスター 「村上ファンド」4444億円の闇』(東洋経済新報社)を著す。社内に山田姓が多いため「たけひろ」ではなく「ゆうだい」と呼ばれる。

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