常識外な「悪質クレーマー」を犯罪心理学者が分析 クレーマーとストーカーは心理状態が似ている
カスハラ対策は企業だけでは限界があり、桐生教授は法律が必要だと考える。現状でも悪質なカスハラは強要罪、暴行罪、威力業務妨害罪といった法律で取り締まることは可能だ。過去にはタオルケットに穴が開いていたからと、衣料品店で店員に土下座を強要した客が強要罪で逮捕されたケースもある。
ストーカーとカスハラは加害者の心理が共通する
ただ、カスハラそのものを取り締まる法律はない。立法化には時間がかかるため、桐生教授が提言するのが、ストーカー規制法を拡大改正してカスハラを規制することだ。
「ストーカーとカスハラ行為は、加害者の心理や行動が似ています。ストーカーでは加害者が年配の場合、孤独感などから話し相手を欲する傾向が強く、つきまといなどの問題行動を繰り返す要因になります。また、自分の間違いを認めづらく、感情のコントロールが難しい傾向があります。これはカスハラをする人に共通しています」(桐生教授)
日本のストーカー規制法は、つきまとい行為を「恋愛感情、好意の感情またはその感情が満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足させる目的」と規定している。恋愛や好意の感情、怨恨の感情に限っているため、カスハラを入れる場合、この制限をなくす必要がある。
ストーカーは同一人物に、つきまとい行為をするが、カスハラは特定の業種や店舗に限らず、別の場所でもカスハラ行為に及ぶことがある。単にストーカー規制法を拡大しただけでは、全て取り締まることは難しい。桐生教授は同じ店で繰り返しクレーム行為に及んだ事案から法規制することを提言している。
「『お客様は神様』という言葉が曲解されていますが、客は神様ではなく、客も店も『おたがい様』です。互いに尊重することができればカスハラは減り、日本の消費者社会も成熟したものになると思います」
(ライター・国分瑠衣子)