しまむら「20代客」を1年で急増させた改革の中身 売り場の"聖域"が消えてバイヤーに起きた変化

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私たちの強みは、約600という数のサプライヤーとお取引があること。しかも、ブランドコンセプトを打ち出す戦略に変えてからは、サプライヤーの間でも競争原理が働いて競争力の高い商品が増えてきていると感じる。

商品開発の裏で、在庫管理の方法も見直した。在庫を持ちすぎると値引きが増えて利益を毀損してしまう。過剰在庫になるのを防ぐため注力しているのが、短納期生産。ヤングカジュアル商品は全体の6割を短納期で作っている。

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――取り組みの中で、特に成功した分野は?

しまむら事業を牽引する婦人服は、売り上げの3分の1をヤングカジュアルが占めている。その中の「2PINK(ツーピンク)」は手を変え品を変えて、非常に売れ行きがいい。これまでは30~50代主婦がターゲットだったが、1年前から20~60代女性へ幅を広げて全年齢をカバーしている。

売り上げの3分の1はヤングカジュアル(撮影:風間仁一郎)

――ヤングカジュアルの比率を新たに増やすのは大変だったのでは?

小売りにとって売り場とは縄張りだ。たとえば紳士、婦人、肌着といった売り場ごとの予算目標に向けて、商品を並べて売っていく。だから予算が与えられた売り場というのは、ハンガー1本たりとも奪ってはいけない“聖域”だった。

ところがコロナ禍では、家の中で着るパジャマ類はよく売れるが、外出用の服や靴などは極端に売れなくなった。先述の縄張り意識でやっていると、せっかく売れるものがあるのに売り場が小さいままということになってしまう。

これまで「期中の予算変更」や「期中の売り場変更」はしたことがなかったが、バイヤーの聖域を取り払い、実需に応じて売り場と予算を柔軟に変える方針に変えた。今では新しい考え方もかなり根付いてきたと感じる。

こんな取り組みを柔軟にやってきたので、コロナをきっかけにバイヤーの考え方もだいぶ変わったと思っている。今はコロナ禍が落ち着いてきたので、お出かけ需要に特化している。ヤングカジュアルや靴、バッグの売り場を増やし、予算も増やしている。

担当役員も若返り

――組織改革も行ったのですか?

基本的な組織は変わっていないが、よりクリエーティブな方向へ変える必要があった。役員を含めて全体的に代替わりというか、世代を若くしている。

特に営業部門でしまむら事業商品部の担当役員は、役員の中では一番若手。あとアベイル(ヤングカジュアル)事業、シャンブル(雑貨ファッション)事業、バースデイ(子供服)事業、ここも新しい役員を充てている。発想そのものをどんどん若返らせていく狙いがある。

――一連の改革は藤原取締役の意向も大きいのでしょうか?

基本的に原案は私が作っている。が、これまで会社を育ててきた経験がある藤原からも、いろいろなアドバイスを受けている。

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