前原誠司氏「自主防衛が主で、日米同盟は補完に」 「アメリカの抑止力」の後退に備えた対応を

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塩田:防衛装備の海外への移転については。

前原:広げていったほうがいいと思いますが、私にとっては、優先順位はそれほど高くないですね。優先順位が高いのは自国の防衛生産の基盤が強くなることです。生産基盤を持って自国生産することが大事です。優先順位が高いと思っているのはその点です。

「サイバー安全保障基本法案」を作成

塩田:もう1つ、サイバー攻撃とその分野の安全保障について、何が大きな問題ですか。

前原:わが党が政府案よりも踏み込んでいると思う点について、「サイバー安全保障基本法(仮称)骨子案(未定稿)」を用意し、6月1日、調査会の皆さんに諮って議論しました。サイバー安全保障とは「安全保障上の懸念を生じさせる重大なサイバー攻撃に的確かつ迅速に対処すること」とうたい、「アクティブ・サイバー・ディフェンス(能動的サイバー防御)」、つまり「サイバー攻撃の兆候について情報を収集し、サイバー攻撃の主体を探知し、及びサイバー攻撃を排除するための措置」を講じて、しっかりと対応する。

政府は遅いんですよ。今、何とか準備室というのを作って情報を集めている段階ですけど、法案が出てくるのは、恐らく2024年だと思う。われわれは、それを急がせる意味で、理念法ではありますけど、まずは骨子をこの通常国会で提言し、恐らくは次の臨時国会で法案を提出しようという考えです。次に個別法の改正まで進まなければならなくなる。

アクティブ・サイバー・ディフェンスを唱えるのは、今までのように受け身だけだと、元を断てないからです。パトロールもできない。攻撃を仕掛けるやからが、どういうサイバー空間にいるかもわからない。

やられて、初めて「しまった」ということではいけない。まずパトロールし、日本への攻撃を事前に探知して、その元を断てるようなものを作る。それは「専守防衛の範囲」という建て付けの中で、ある程度、必要です。ミサイル発射が判明した場合、ほかに手段がなければ、敵のミサイル基地の攻撃ができるという憲法解釈と全く同じです。

パトロールは防衛省設置法の「調査研究」でできるわけです。日本に対してサイバー攻撃が行われる場合、それをブロックしたり、無力化することはできると基本的に書いてあります。それについて、憲法第21条の通信の自由などは当然、守らなければいけないけど、「公共の福祉」という範囲で一定の制約を受けるのは当たり前です。われわれはこのような理念をまとめたものを出して、スピードアップを図る。

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