JR室蘭本線に登場した新型列車はどんな仕様か? ほんのり桜色の737系、室蘭ー苫小牧間で運転

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車両基地を過ぎて苫小牧駅構内の分岐器をすべて渡り終えると、列車は滑らかに加速した。青葉、糸井、そして駅間が広がるも錦岡までは苫小牧市の住宅エリアが細長く続く。「北海道レベルで…」の注釈は必要だが電化路線としての需要は見られ、各駅で1人、2人と乗り降りがある。北海道のワンマン運転は前乗り前降り方式である。日曜日だったので日中ながら若者の姿が目立った。

そこからは市街地を離れて、太平洋岸を国道とともに進む。反対側にはやがて、柵に囲われた牧草地が広がる。サラブレッドの産地として有名な社台と気づくが、雨のせいか放牧はなく、背景となる樽前山も雲の中に隠れていた。

この間、室蘭本線は日本一の直線が続き(ただし測量中心線として)、列車はじつに軽やかに快走する。キハ143形も学園都市線において付随車のキサハ144形を伴う前提で高出力エンジンを備え、それを室蘭本線では動力車のみの2両編成としたため一般形気動車としては高性能で、最高速度は時速110km、常時の運転でも時速105kmあたりを出していた(ちなみにH100形は時速100km)。だが、737系はその性能を超え、最高運転速度は時速120kmに引き上げている。それに何より、気動車とは加速が違う。

所要時間は9分短縮

起動加速度は731系シリーズと同じく2.2km毎時毎秒で、ドア閉確認後、スタートから30秒で時速60km、60秒弱で時速100km、1分15秒で時速119kmに達する。乗り心地のよさは特急や重量貨物列車の走行を支える根本的な線路のよさに加え、他形式同様、台車にヨーダンパと軸ダンパを備えるせいもあるだろうか。長い駅間はリミットの時速120kmに引っ掛けない時速119kmで「P6」からノッチオフし、時速110km程度に下がると再投入する。P6で加速した後、P3に入れ続けて時速118〜119kmを維持する操縦方法の運転士も見た。

この性能アップにより、苫小牧―東室蘭間の所要時間は平均1時間10分から1時間1分へと9分短縮された。通勤通学時間帯でなく、特急待避もない夜の最速列車は8分短縮されて55分となっている。これらの時間短縮効果により、苫小牧や東室蘭での接続も増やしたと言う。

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余談ながら、ダイヤ改正日を挟む5月号の『時刻表』では「5月19日まで運転」の気動車列車と「5月20日から運転」の電車の時刻が隣同士に並んで記載されていた。そのため、足の差を比較するにはとても好都合だった。

ところで、加速は鋭いが、減速の操縦は緩やかであり、東京や大阪の電車のようにフルスピードのまま駅に飛び込んでゆくようなことはない。冬の氷結を前提にしてブレーキ距離は詰めず、慎重に長い距離を取っているのだ。JR北海道らしい運転と感じられる。

鉄道ジャーナル編集部

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車両を中心とする伝統的な鉄道趣味の分野を基本にしながら、鉄道のシステム、輸送の実態、その将来像まで、幅広く目を向ける総合的な鉄道情報誌。創刊は1967年。

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