JR室蘭本線に登場した新型列車はどんな仕様か? ほんのり桜色の737系、室蘭ー苫小牧間で運転

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所属基地は他の電車と同じく札幌運転所。前日19日をもって運用を離れた143形同様に一部は苫小牧―札幌間も走る。すなわち早朝に札幌発、夜に札幌行きとして1往復し、編成をローテーションで交代させてゆく。

留置線から転線してホームに据え付けられた737系は、独特なフォルムの731系などに比べ非常にシンプル。地がアルミで、基本的な車体構成に凹凸がない姿にHITACHIの特徴が表れており、素材の違いによるドアを除くと側面は一色。さらにワンマン車のため前後2ドアで、ドア間には5枚または4枚の大窓が並ぶだけと言ってよい。だが、塗装を施しており、それも遠目に白か?と見えた色彩も淡いピンク、言うなれば「ほんのり桜色」であり、とても上品である。対照的にブラックの前面は潔い切妻のようだが、各部に微妙な折れ角を付けており、新型気動車H100形とも共通のアクセントカラーを配している。カンパニーカラーの黄緑と警戒色の黄色の組み合わせだ。

車内の中央に設けた車いすスペースも特徴

乗車すると新車独特の匂いが香る。この737系、札幌都市圏で活躍する733系・735系と同様に小径車輪を採用して通常より床高さを引き下げたことが特徴の1つである。これによりホームとの段差が解消すると言いたいところだが、札幌近辺ですらフラットになるのは新設駅などの少数に限られる。だからワンマン車の737系が入るエリアは推して知るべし。ステップは消えたとは言え、ともすれば20cm近い段差が残る。

ニワトリが先かタマゴが先かの話になるが、札幌界隈の駅でも、車いす利用者だけでなく、ベビーカーを押す人の姿を見かけなかった。「子供連れのお出かけは車」、そのような生活様式が定着してしまっているのだろう。

低床化の実効のほどはともかく、他の特徴を含めて車内を観察してみる。座席はバケット型のロングシートで、3人または5人分ごとに湾曲したスタンションポールで区切られている。優先席は731系などと共通のオレンジ色で、目に鮮やか。袖仕切りには大きなガラスが嵌められ、車内の見通しはよい。

特徴的なのは、車いすやベビーカー用のスペースを車両中央に配置したことで、片側のロングシートが、その部分で5人分途切れている。洞爺湖温泉やウポポイを訪れる観光利用もあるだろうから、インバウンドの大型荷物置き場にもなる。

また、混雑時に出入口付近に固まりそうな集団を、立席スペースとして中まで誘導する効果も期待できるだろうか。ロングシートはとかく旅行者に人気がないが、ボックス座席の場合、高校生などは1人でも異分子がいると座席につかない。だから座席が無闇に空き、出入口は余計に込むという傾向がある。それを解消することが最近のロングシート化の理由の1つであると聞く。

特急「すずらん4号」を受けて、12時38分に発車。ゆっくり踏み出すと苫小牧運転所にはキハ40形や150形に、40形「北海道の恵み」ラッピング車両、そしてH100形の姿もあった。一般の40形や150形は今のところ室蘭本線岩見沢方面や日高本線で残るが、古い40形は廃車となる。ただし改装されて道内に4両が散らばる「恵み」シリーズ、改装の度をより高めた「山紫水明」シリーズの2両は別とされている。

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