アップル「超絶ゴーグル」体験でわかった10のこと 何に使うの?重くない?映画はどう見える?

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Apple Vision Pro、30分という非常に短いデモ体験だったが、視覚、聴覚、触覚、体感が刺激され、非常に濃密な時間だったことを、この原稿をまとめながら改めて再認識することになった。

これまで、コンピューター、スマートフォン、タブレット、ヘッドマウントディスプレー、VRゴーグルなど、さまざまなデバイスに触れてきて、惜しいなと思う点、不安感や不快感を伴う点などを経験してきた。今回体験したApple Vision Proは、弱い部分を見せず、非常にうまくやってのけている現段階で唯一の製品化直前のデバイスだと位置づけることができた。

特に、実際の視覚から大きな違和感を作り出さないよう、遅延を減らすことにチップレベルから注意深く実装している点。さらに空間コンピューターという新しいカテゴリーに合わせて用意した、見てつまむだけの空間インターフェース。これらの要素によって、一般の人が使い始めて、すぐに慣れることができる自然な環境に仕上がっていた。

使ってわかった「コストメリット」

日本円で約49万円。価格が発表されたとき、アップル本社内でライブストリーミングを見ていた開発者たちも、高いと感じたのか、ため息に似た感嘆の声が漏れた。空間コンピューティングという新しい方法のためのインターフェースという、これまでにないデバイスだ。これまでにないからこそ、単純な金額の高さが際立ってしまう。

しかしデモを通じて、体験価値からコストメリットを見出せる場面も見つけることができた。

例えば、有機ELディスプレーやテレビを、視界を覆うようにデスクに3台置きたい場合。あるいは最高に画質がいい200インチのスクリーンとサラウンドシステムを用いたホームシアターを自宅に組みたい場合。49万円という金額は決して高すぎないと言える。

今後、アップルが、空間コンピューティングを、同社全体のどんなポジションに位置づけていくのか。活用している技術がどのように進歩していくのか。そして、現段階で見出せないキラーアプリは、いったい何なのか。
わからないことも少なくないが、生活の一部で人がゴーグル型のデバイスをつけるようになる「行動変容」(=イノベーション)を起こすには十分な製品を見せつけられたと考える。

松村 太郎 ジャーナリスト

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まつむら たろう / Taro Matsumura

1980年生まれ。慶應義塾大学政策・メディア研究科卒。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。著書に『LinkedInスタートブック』(日経BP)、『スマートフォン新時代』(NTT出版)、監訳に『「ソーシャルラーニング」入門』(日経BP)など。

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