自民・公明の激突「出来レース」説も囁かれる事情 早期解散絡む両党協議の裏に自民権力闘争の影

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公明が東京での議席増を切望する背景には、4月の統一地方選で躍進した日本維新の会の“公明つぶし”の動きがある。維新はこれまで「大阪都構想」への協力を得るため、公明が候補を立てる大阪府の4選挙区と兵庫県の2選挙区で対立候補擁立を見送ってきた。

しかし次期衆院選で野党第1党を狙う維新は、これまでの「地元」での公明とのすみ分けを白紙化し、対決する構えを見せている。維新が事実上制圧している両府県で対立候補を立てれば、公明は「最大6議席減の危機」(関係者)に陥る。だからこそ、選挙区数が増える東京、愛知など、公明が一定の集票力を持つ大都市での、新たな選挙区確保が必要となったのだ。

自民の致命傷になりかねない選挙協力解消

このため公明は、自民に先行して東京29区、埼玉14区、愛知16区での独自候補擁立を発表。さらに東京28区も譲るよう要求。これに対し自民側は「『10減』で自動的に議席が減るのはわが党」(幹部)とし、公明が東京などでの自民推薦見送りをちらつかせると「脅しだ」(閣僚経験者)と猛反発。調整不能に陥ったのが現状だ。

公明幹部によると、今年2月、自民側は4月の衆院千葉5区補欠選挙で公明の支援を得られれば、東京28区の公明擁立に「最大限努力する」と約束。しかし、統一地方選後に「都連が候補者を決めており、受け入れは困難」と伝えてきたと主張する。

さらに、東京29区についても、自民執行部は年明けに公明に対し「地元に反発があっても説得する」との方針を伝えたが、ここにきて「党本部の推薦が出ても、地元の自民は応援しない」と対決姿勢に転じたと指摘する。このため、公明側は「自民が約束をほごにした」と力説するが、自民側は「公明の独走が原因」と反発する。

ただ、自民党全体では、公明への不満と次期衆院選への不安が複雑に交じり合う。東京での自公選挙協力解消を前提に選挙結果を予測すると「自民は小選挙区で最善で10勝9敗、最悪3勝26敗」(選挙アナリスト)との分析もあり、自民の致命傷になりかねないからだ。

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